第24回:地震によって倒壊した橋台基礎下の地盤改良工事に施工不備があった場合の責任は?

当社が施工した橋台が地震によって倒壊。橋台基礎下の地盤改良工事も当社で施工しており、施工不備のあったことが判明。
この場合、当社はどこまでの責任を負うことになる?

当社が施工した橋台が地震によって倒壊しましたが、橋台の基礎下に当社で施工した地盤改良工事に施工不備のあったことが確認されました。

この場合、当社はどこまでの責任を負うことになるでしょうか。


(※イメージです。)

橋台が地震をきっかけに倒壊したのであったとしても、瑕疵担保責任あるいは不法行為責任に基づき損害賠償義務を負うことになります。

この事例には、2つのポイントがあります。

  1. 瑕疵担保責任及び不法行為責任の内容
  2. 不可抗力免責の有無

順に説明いたします。

1.瑕疵担保責任及び不法行為責任の内容

本件の場合、地盤改良工事に施工不備があったことが明らかとなっていますので、施工業者は、発注者に対して、瑕疵担保責任(民法634条1項)あるいは不法行為責任(民法709条)を負う可能性があります。不法行為責任については、地盤改良工事の不備によって橋台の基本的安全性を欠く状態にあったことが要件となります(「基本的安全性」の内容については、第1回参照)。

瑕疵担保責任の内容は、瑕疵を修補する義務、あるいは修補費用を賠償する義務となりますが、不法行為責任の内容は、あくまでも損害に対する金銭賠償になります。

もっとも、これらの責任の範囲は、施工不備に起因して生じた損害に限られます。つまり、施工不備が存在することによって橋台が倒壊してしまったのであれば、倒壊自体が損害となり、その損害に対して施工業者が責任を負うことになります。

2.不可抗力免責の有無

そこで、本件の橋台は地震によって倒壊したのであって、地盤改良工事に不備がなかったとしても倒壊したのではないか、つまり施工業者が責任を負うべき損害ではないという「不可抗力免責」の主張をすることができないか、が問題となります。

この点、裁判例に、阪神大震災によるマンション倒壊事案について、神戸地裁平成11年9月20日判決は、倒壊した賃貸マンション自体が、建築当時を基準に考えても、通常有すべき安全性を有していなかった建物であること(瑕疵の建物であること)を前提として、そのような建物に、自然力である地震が加わった場合の責任の有無に関する因果関係の判定及び損害発生に対する寄与度の考え方において、
「本件地震は現行の設計震度をも上回る揺れの地震であったのであるから、本件建物が仮に建築当時の設計震度による最低限の耐震性を有していたとしても、本件建物は本件地震により倒壊していたと推認することができるし、逆に、本件地震が建築当時想定されていた水平震度程度の揺れの地震であったとしても、本件建物は倒壊していたと推認することができる。しかし、本件建物は、結局は本件地震により倒壊する運命にあったとしても、仮に建築当時の基準により通常有すべき安全性を備えていたとすれば、その倒壊の状況は、壁の倒れる順序・方向、建物倒壊までの時間等の点で本件の実際の倒壊状況と同様であったとまで推認することはできず、実際の施工の不備の点を考慮すると、むしろ大いに異なるものとなっていたと考えるのが自然であって、本件賃借人らの死傷の原因となった、一階部分が完全に押しつぶされる形での倒壊には至らなかった可能性もあり、現に本件建物倒壊によっても本件地震の際に本件建物一階に居た者全員が死亡したわけではないことを併せ考えると、本件賃借人らの死傷は、本件地震という不可抗力によるものとはいえず、本件建物自体の設置の瑕疵と想定外の揺れの本件地震とが、競合してその原因となっているものと認めるのが相当である。」
と判示して、不可抗力免責の主張を退け、損害賠償責任を認めています。

もっとも、上記判示でも言及されていますように、瑕疵と想定外の自然力とが競合して損害発生の原因となっている場合には、損害の公平な分担という損害賠償制度の趣旨から、地震という自然力の損害発生への寄与度を割合的に斟酌するのが相当であるとして、地震の損害発生への寄与度を5割と認めています。
したがいまして、本件でも、地盤改良工事において不備ある施工をした施工業者は、橋台が地震をきっかけに倒壊したのであったとしても、不可抗力免責の主張は認められず、瑕疵担保責任あるいは不法行為責任に基づき損害賠償義務を負うことになりますが、その損害額は、一定程度減額される可能性があります。

トラブルの未然防止策

施工業者としては、構造安全性を確保した(耐震性を有する)ものとして設計された設計図書どおりに施工したのであるから、その設計でも耐えられない地震によって倒壊したにすぎないとして、施工業者が責任を負うことはないと主張したいところですが、そもそも施工不備があれば、設計図どおりに施工したとは言えず、また地震だけでなく、施工不備も倒壊の一原因になっているのであれば、施工業者が責任を負うべきであると言えます。また、昨今、大地震が続いて発生しており(頻発しているといっても過言ではありません)、倒壊した建物から明らかな施工不備が発覚するケースが散見されます。
建設工事現場においては、工事中や引渡し時に施工不備が発覚しなかったとしても、その後、地震等によってより大きな被害が出てから、それに対する賠償責任を負わされることにもなりますので、この点を十分肝に銘じて施工不備をなくすための努力をすべきであると考えます。

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