i-Construction

渋谷建設株式会社

i-ConstructionBIM/CIM

外注に頼らず、全てを自社で行うことで
ICT現場の利益を確保しノウハウを蓄積する

ICT現場で利益を生み出すのはやり方次第
最大のポイントは外注任せにしないこと

山形市の渋谷建設は創業100年余の歴史を持つ総合建設会社です。道路の築造・舗装から橋梁架設、ダム、河川、トンネルに上下水道、空港や公園、競技場など各種造成工事まで、公共土木工事全般を幅広く手がけ、郷土のインフラ作りに貢献しています。もちろんICTへの取組みも活発に進めており、すでに3現場でICTを運用した実績を蓄積しています。そんな同社の取組みの詳細について、工務管理部の部長である柿崎洋氏に伺います。

まず熟練者が取組むべき点群処理

ICTの取組みはいつからですか

柿崎

当社のICTの本格的な取組みは、国交省がi-Constructionを提唱した2016年からですね。具体的には16年6月頃にi-Con対応の検討を開始し、その夏にはTREND-POINTとTREND-CORE、写真測量用のソフト等を導入して具体的な体制づくりに着手しました。もともと当社ではEX-TREND武蔵を使っており、3次元設計やTS出来形には対応できていたので、約半年かけて3次元測量関連の機器・ソフト類の操作を修得し、運用について考えていきました。

専任の担当者を育成されたのですか

柿崎

まず私自身が新しいソフト類の操作を身に付けることから始めました。こうした作業を若手に任せる会社もありますが、私は点群処理等も「現場を知っている人間」がやるべきだと考えたのです。もちろんソフトを使って点群処理するだけなら若手でもできますが、私たちの仕事はあくまでICT建機を正確に動かしてその現場を仕上げること。そのためにどんな点群が必要なのか、分かっていなければ有用な点群データは作れないでしょう。つまり、どの範囲のどんな精度の点群データが必要か分かる熟練者が行うべきなのです。

実際に現場へ展開したのは?

柿崎

2017年の3月前には自社対応の目処が立ったので、同3月時点の発注物件のうち3件ほど実際にICTを活用できそうな現場をピックアップしてICT活用を提案していきました。現在、この3件のうち2件は無事に完了し、残り1件は年を越して繰り越しになったため、これからICTを使っていく段階となります。また、これらとは別に、発注者の依頼で起工測量だけICTで行ったケースもあります。基本的にはどれもトータルに社内で対応することができ、ICTにはほぼ問題なく対応できる体制が整ったと考えています。

TREND-POINTによる作業状況

ICTの導入効果はいかがですか

柿崎

完了したICT現場は全体に効率化され、とてもスムーズに進行できた実感があります。起工測量が効率化されたのはもちろん、ICT施工を行った区間についても、精度が思うように上がらず丁張をかけ直したケースがありましたが、それを除けば丁張なしでできました。ICT建機のオペレータだけで仕上げられるので、人的にも時間的にも大きく省力化・効率化できたのです。また、現場に人が入らないので、安全面も大きく改善されていると思います。

ICT建機のオペレータは何か言っていましたか

柿崎

特にコメント等は聞いていませんが、楽になったはずですよ。丁張がなくてもブルの排土板は勝手に高さを出してくれるし、仕上げもバックホウが自動的に行ってくれる……。いちいち私たちに頼んだり尋ねたりする必要もありません。オペレータは自分がやりたいタイミングで、作業を進められるわけですから。また、私たちも指示を出せば後はオペレータに任せられるので他の作業を行えます。転圧も夕方にはデータを見て確認できるし、仕上げもクルマから見て確認するだけ。そこは本当に楽になったと思います。

ICT現場で確実に利益を出すには

ICT現場で利益を出すのが難しいという方もいます

柿崎

たしかに「儲からない」と嘆いている人もいますね。しかし当社ではICT施工が完了した2現場でもすでに十分な利益を出しており、ICTのために行った投資もすでに回収済みです。現場の状況にもよりますが、やり方次第ではないでしょうか。

ICT現場で利益を出すためのポイントは?

柿崎

外注任せにしないで、すべて自社で行うことですね。外注に丸投げしていたら、コストを抑えるのは難しいでしょう。むろんICT建機のコストは大きな課題ですが、これも今後普及が進んで値段が下がれば大きなメリットが生まれてくるはず。たとえば通常のバックホウの価格プラス10万円程度まで抑えられれば、普及は爆発的に進みますよ。

3D設計データは発注者からもらいたいという声もありますね?

柿崎

現実には無理でしょう。発注者から提供されるデータは、私たちが現場を施工するための3D設計データとは全く異なるもの。私たちが必要なのは、実際にICT建機を動かすために組む3D設計データですから、その現場を知る人間が作る必要があります。裏返せば、ICT施工ではきちんとした3Dデータさえ作ってしまえば、それで工事は終わったも同然なのです。

構造図と3Dモデル確認を縦断方向と横断方向から行う

お作りになる3Dデータは1つではありませんよね?

柿崎

私の場合、3Dデータをひと現場で10個近く作りますが、うち3つは失敗作。そして「これで行ける」という完成形が1つ。他に施工内容に合わせて、さまざまに加工したデータを作るのです。たとえばブルの敷均し用のデータなら、敷均し面からはみ出させてやる必要があるし、転圧用なら重機が路肩まで行ったら落ちてしまうので、これも1mほど離して作ります。築堤なんか広がりますから一断面ごとに違ってきます。現場を知らなければ作れない、というのはそういうことです。

ICTからCIMへ

現況とCIMモデル

ICTの展開における次の課題は?

柿崎

ICT技術の社内への普及ですね。基本的には、当社の技術者全員にICTスキルを身に付けてほしいのです。EX-TREND武蔵は全員使っているので、3D設計データはみんな作れると思いますが、TREND-POINTやTREND-COREについても、ある程度は使えるようにしていきたいですね。

もともと人材育成には熱心と聞きました

柿崎

そうですね。私自身も各ソフトの教習用ビデオを作ったりしますし、CPDS等も利用して教育を行っています。CPDSの講習会は年4回、山形県建設会館で他社の社員も受講できるオープンな形で開催しています。最近のテーマはICT関連が中心で、次回は福井コンピュータの方を講師に迎えて、TREND-COREの操作と活用法についての講習会を実施する予定です。

樋管CIMモデル

ICTの次はCIMへの挑戦ですね

柿崎

そうなりますね(笑)。TREND-CORE は少しずつ使い始めていますが、まだまだ使いこなすほどにはなっていません。しかし、ただ待っていても操作は身に付かないので、これから着手予定の石巻樋管本体工事の現場で活用しています。具体的には、樋管本体構造物の3DモデルをTREND-COREで作っています。上手く仕上がったら、発注者や地元への説明に使えますよね。時間軸を加えれば施工手順の説明にも使えるし、若い技術者の教育用にも活用できそうです。

CIM物件も増えていくでしょうか

柿崎

そう遠くない将来、3次元設計や3Dモデルの制作が当たり前になる時代がやって来るかもしれず、その可能性は決して低くありません。そして、それが実際に始まってしまってから対応を開始しても、間に合わせるのは難しいでしょう。CIMについても、私はちょっと早めに取組みを開始しておき、現場での運用が本格化する前に、十分対応できる体制を整えておきたいと考えています。

※2018年発行のi-Construction活用事例集で掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。

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柿崎 洋工務管理部 部長

渋谷建設株式会社

創業
1910年4月
設立
1948年11月
代表者
代表取締役社長 澁谷 豪
本社
山形県山形市
資本金
5000万円
事業内容
公共土木工事の施工を主とするインフラ総合建設業

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