点群データ&3次元を幅広く活用し地域を牽引
新たなビジネスフィールドを切り拓いていく
いまは「モノをつくるための3次元」だが、
今後はその他の分野にも大きく広がっていく
山梨県甲府市の東洋測量設計は、この地域を代表する測量会社の一社。公共測量を中心に土木設計や補償コンサルタントなど幅広く展開し、地域の社会資本整備を担っています。近年は最新ICT技術の導入に積極的に取り組み、特にUAV3次元レーザー測量では、UAV機器と共にTREND-POINT、TREND-ONE、TREND-CORE等を活用して豊富な実績を蓄積。ここでは同社の木嶋孝専務取締役と上條真吾課長にお話を伺います。
3次元ツールはFC製品で統一
- 測量設計部門の業務をご紹介ください
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木嶋氏
名前の通り測量を中心に関連する業務を全般的に行っており、土木設計の部隊や用地調査など用地関連の業務を行っているチームもあります。測量業務の主力は公共測量が中心となり、たとえば昨年の実績では全体の3割が国土交通省の発注業務で6割が山梨県の発注。残る1割が市町村関係の業務となってます。
- 技術の高さに定評があると聞きました
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木嶋氏
公共測量に関わるモノなら「できない技術はない」と自負しています。実際、それだけの機材と経験と人員が揃っています。中でもUAVによる3次元レーザー測量については、点群データの活用と合せ早くから導入を進めております。
- UAVレーザー測量はいつごろですか?
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木嶋氏
通常のUAVを導入したのは2013年ですが、3 次元の取り組みを開始したのは2015年で、まず地上レーザー測量から始めました。そして、試行錯誤しながら実証を重ね、2016年に国土交通省の発注を受けてレーザーで採った点群データを実務で運用開始。3次元データを成果品として提出し始めました。2019年から現在までの8カ月弱で、UAVレーザー活用案件は既に20件になります。
- UAV3次元レーザー測量の基本的な流れ と導入ソフトをご紹介ください
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上條氏
まずUAVの飛行計画はフリーソフトで飛行経路を作ります。そしてUAVでレーザースキャン後、他ソフトで点群のマッチングを行ってTREND-POINTに書き出し、ゴミ取りや断面を切るなど点群を編集します。さらにTREND-ONEへ連携させて2次元図面まで作ることも多いですね。点群の座標、標高等のデータを取得しても「やはり2次元平面図も手元に欲しい」と言われてしまうんですよ。
- TREND-COREについては?
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上條氏
TREND-COREはモデルに点群を活用するなど、“設計者目線”で私たち自身の勉強を兼ねて使っています。測量は設計のベースとなるものなので、私たちも「設計の立場」で考えた観測が求められます。となれば設計を勉強する必要があるわけで、そこでTREND-COREを使おうと考えました。もちろん3次元の作業に関しては、点群との相性が大事ですからね。ですから、一部を除きFC製品で統一している状況です。
- なぜ福井コンピュータ製品で統一を?
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上條氏
福井コンピュータが「ユーザーの声に応えてくれる」からです。実際、私もしばしば製品への要望を出していますし、福井コンピュータの営業マンが開発担当を連れて当社まで来てくれたこともあります。製品の機能や操作性、連携を考えたら、点群をやるにはやはりFC製品でなければ厳しいんです。発注者もそれは同じようで……以前、成果品を見せようとTREND-POINTを立上げたら、発注者がまず口にしたのが「やはり福井コンピュータ製品なんですね」という言葉でした。私もこれから点群・3次元に取り組んでいこうという方には、まずFC製品を勧めます。
総延長15km弱に及ぶ砂防河川の土量計算
- 内業だけ依頼されることもありますか?
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上條氏
もちろんです。最近の例では、昨年の台風19号の災害復旧関連案件で、先方がUAVレーザーを使って観測したデータを元に解析を依頼され、総延長15km弱の砂防河川の土量計算を行いました。山間地の砂防河川では、台風の豪雨で上流から大量の砂や石が流れてくるのを砂防堰堤が止めていますが、昨年の台風19号で実際どれくらい土砂を堰き止めたか……砂防事業の効果を確認したいという狙いでした。そこで元の地形データと台風後に採った新しい点群を重ね、ヒートマップで分かりやすく現しました。
- ソフト操作もUAVパイロットも課長が?
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上條氏
パイロットは私の他にも2人いますが、3次元系のソフトは主に私が使っています。皆に普及させていくには、まず私が使いこなさないと……。その意味で、今回の案件は私にとっても非常に勉強になりました。福井コンピュータの方にも「ここはどうやったら上手くできる?」とか、ずいぶんサポートしてもらいました(笑)。そうやってTREND-POINTの機能を今まで以上に幅広く活用しなければ、できなかったかもしれません。これまで自分がやってきた点群データの編集や解析ノウハウだけでなく、全く新しい知識も学ぶことができたと感じています。
- 点群・3次元の導入効果はどうですか?
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木嶋氏
3次元測量と従来方式のTS地形測量を比較すると、たとえば10万㎡の土地をTSで基準点を回し地形を取っていく場合、地形条件にもよりますが、観測だけで1カ月強は必要です。つまり、毎日コンスタントに現場へ入って実働30日はかかるんです。ところがUAVレーザーで10万㎡の点群を取るなら地形条件にもよりますが、観測自体は1日もかかりません。その点群の解析、グラウンドデータ作成という所まで、3~4週間あればモデリングは全部終わる。つまり1ヶ月以内で全部できてしまうのです。まあ、面積が小さくなると従来方式の方が効率的な場合もあるし、その辺りは使い分けです。当社では作業面積が5~6万㎡を超える場合は、UAVレーザー測量も提案しています。
点群・3次元活用の可能性は無限に拡大
- 課長ご自身がパイロットも内業も行うのは 大変そうですね
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上條氏
そうですね(笑)。でも、点群に触り始めて4年ほど経ちますが、私はいまだにこれが面白くてたまりません。点群にせよ3次元にせよ、技術者としてその可能性はまだまだ広がっていくと感じています。いまはi-Conの一環として「モノをつくるための3次元」に留まっていますが、今後はその他にも大きく広がっていくはずです。たとえば弊社には補償コンサルタント部門がありますが、先日「施工時に建てた擁壁が経年劣化により傾いてきたかもしれない」という相談を受け、この傾斜を3次元で見せられないかやってみました。結果は大きな影響が出るほどの傾きはありませんでしたが、非常に面白いチャレンジでした。こんな風に、考えれば考えるほど活用アイデアはいろいろ出てきます。
- 発注者の意識も変わってきたでしょうか
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上條氏
3次元や点群を用いた観測や測量の活用に関していえば、山梨県でも、3次元や点群活用の流れが強まっているのは間違いないわけで。私たちもこの技術を「広めていきたい」という思いがあります。まずは「3次元とはどういうものか」「3次元を活用して何ができるのか」、発注者様に積極的に提案し、理解を深めていただこうと考えています。
- 今後チャレンジしたいことは?
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木嶋氏
測量業はインフラ整備という部分が大きいのですが、今の時代、新規の道路を作る事業などなかなかありません。そこでこれに替わる新しい成長分野として注目したいのが、管理に関わる業務です。たとえば橋梁点検など、上手く3次元を利用した点検業務などの可能性も、視野に入れていきたいですね。
※取材は2020年8月に行われたものです。役職などは取材当時のものです。
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