1. 2026年開始の住所等変更登記 義務化:制度導入の背景と概要
2026年4月1日から施行された「住所等変更登記の義務化」は、不動産登記法改正の大きな柱の一つです。これまで任意とされていた登記名義人の住所や氏名の変更手続きが、法的な義務として位置づけられることになりました。この制度改正は、先行して2024年に施行された相続登記義務化とともに、日本の土地制度を根本から見直す重要な転換点となります。
1.1 所有者不明土地を減らすための義務化の狙い
今回の法改正の最大の目的は、長年にわたり社会問題化している所有者不明土地の発生を予防することにあります。所有者不明土地とは、登記簿を確認しても所有者が直ちに判明しない、あるいは判明しても連絡がつかない土地のことを指します。
これまで、引越しによる住所変更や婚姻等による氏名変更があった場合でも、変更登記の申請は義務ではありませんでした。そのため、登記簿上の情報が古いまま放置され、いざ境界確定測量や売買、公共事業を行おうとした際に、現在の所有者と連絡が取れないという事態が頻発していました。これを解消するため、国は登記簿上の情報と実態を一致させる仕組み作りを急いでいます。
新制度では、住所や氏名に変更があった日から2年以内の変更登記申請が義務付けられます。正当な理由なく申請を怠った場合、登記官による「申請の催告」を経たうえで、5万円以下の過料が科される可能性があります。実務においては、用地測量や境界確認で所有者探索が必要となる測量業者にとっても、また分筆登記や地目変更登記などの表示に関する登記を扱う土地家屋調査士にとっても、所有者情報の正確性がこれまで以上に重要になります。
参考:所有者不明土地の解消に向けた不動産に関するルール見直しについて - 法務省
1.2 検索用情報の申出で進む職権変更登記の仕組み
義務化に伴う国民の負担を軽減するため、新たな仕組みとして「職権による住所等変更登記」の制度も導入されます。これは、登記官が他の公的機関から情報を取得し、職権で登記記録を変更できる制度です。
個人の所有者については、あらかじめ本人が法務局に対して氏名・住所・生年月日などの「検索用情報」の申出を行うことで、住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)等の情報と連携が可能になります。これにより、登記官が定期的に住所変更の事実を確認し、本人の了解を得た上で、職権で住所変更登記を行うことが可能になります。また、この照会は原則として定期的(概ね2年に1回程度)に行われ、継続的に登記情報の最新化が図られる点も特徴です。DV被害者など、住所を知られたくない事情がある方への配慮として、この仕組みは原則として申出があった場合に機能します。
一方で、会社・法人については、商業・法人登記システムの情報を基に、登記官が職権で不動産登記の住所等を変更する仕組みが整備されます。これにより、法人の本店移転等に伴う不動産登記の変更漏れが大幅に減少することが期待されています。
2. 住所等変更登記 義務化(2026)で実務はどう変わる?測量業・土地家屋調査士への影響
2026年4月1日から施行される住所等変更登記の義務化は、権利に関する登記を専門とする司法書士だけでなく、用地測量や境界確認、公共事業に伴う所有者調査を担う測量業者、さらに表示に関する登記を担う土地家屋調査士の実務にも少なからず影響を与えます。登記名義人の情報が最新化されることは、土地の境界確定や各種申請手続きの円滑化に直結するためです。
ここでは、具体的に測量や表示登記の現場でどのような変化や対応が求められるのか、実務的な視点から解説します。
2.1 分筆・表示登記に先立つ所有者情報確認の重要性
土地家屋調査士が受任する分筆登記や地目変更登記などの表示に関する登記申請において、申請人の住所・氏名は登記記録と一致している必要があります。これまでは、住所変更登記が任意であったため、申請の直前に変更漏れが発覚し、急いで住所変更の手続きを行うケースが散見されました。
しかし、2026年の義務化以降は、住所等の変更日から2年以内に登記申請を行わない場合、登記官による「申請の催告」を経たうえで、5万円以下の過料の対象となります。そのため、実務においては以下の点がより重要になります。
受任段階での早期確認:依頼者の現住所と登記上の住所が一致しているか、住民票等を含め初期段階で厳密にチェックする。
法令遵守のアドバイス:不一致がある場合、単なる手続き上の不備ではなく、義務違反となり得る状態であることを依頼者に説明する。
専門家間の連携強化:権利部の登記が必要な場合、速やかに司法書士との連携を図り、表示登記の申請スケジュールに遅れが生じないよう調整する。
例えば、分筆登記を急ぐ案件で住所変更が未了であることが発覚した場合、これまでは「手続きが面倒」と感じる依頼者もいましたが、今後は「義務化および過料リスク」を説明することで、適正な登記申請への理解を得やすくなると考えられます。
2.2 境界立会いの通知・探索業務に期待される変化
境界確定測量の現場において、最も時間と労力を要するのが隣接地所有者への立会い依頼です。登記簿上の住所に連絡をしても宛先不明で戻ってくることは珍しくなく、これが所有者不明土地問題の実態として測量業務の大きな障壁となっていました。これは土地家屋調査士による境界立会いだけでなく、測量業者が用地測量や公共事業に伴う所有者調査を進める場面でも同様です。
すでに始まっている相続登記義務化(2024年施行)に加え、住所等変更登記が義務化されることで、長期的には登記記録の連絡先情報の精度が向上することが期待されます。これにより、境界立会いの通知や探索業務には以下のような変化が予測されます。具体的には、宛先不明による返送の減少や、探索業務に要する期間の短縮といった効果が段階的に現れると考えられます。
もちろん、制度開始直後にすべての登記情報が更新されるわけではありませんが、法務省が進める所有者不明土地の解消に向けた取り組みと連動し、徐々に「連絡のつく登記簿」へと環境が整備されていくでしょう。測量業者や土地家屋調査士としては、こうした過渡期において、依頼者に対し「なぜ隣地の方と連絡がつかないのか」「今後どう改善されるのか」を制度の背景を含めて説明できる知識が求められます。
3. 制度改正に強い実務へ:住所等変更登記 義務化(2026)を見据えた情報管理
2026年4月1日より施行された住所等変更登記の義務化は、単に不動産所有者に手続きを強いるだけでなく、測量や登記に関わる専門家の実務フローにも変革を促すものです。特に、境界確定測量や分筆登記の前提となる「所有者情報の正確性」は、業務の迅速化に直結します。制度改正を機に、社内の情報管理体制を見直し、司法書士との連携を強化した実務フローを構築することが、今後の事務所経営において重要となります。
また、検索用情報の申出やスマート変更登記の仕組みを前提とした情報管理の重要性も高まっています。
3.1 地番・登記・測量成果を整理し、案件管理を安定化する
住所等変更登記が義務化されることで、長期的には登記簿上の住所と現在の住所が一致するケースが増加し、所有者不明土地問題の解消に寄与すると期待されています。しかし、過渡期においては、過去の顧客データと最新の登記情報の突合が不可欠です。特に、検索用情報の登録状況や住所変更の反映状況を踏まえた確認が求められます。
測量業者・土地家屋調査士事務所のいずれにおいても、過去に受託した測量案件の地番や所有者情報をデータベース化し、変更履歴を追跡できる体制を整えることが推奨されます。
例えば、数年前に境界確定を行った土地で新たに分筆登記の依頼があった際、所有者の住所変更が未登記であれば、義務化の周知とともに変更登記を促す必要が生じます。このとき、測量成果と登記情報を一元管理しておけば、申請前の確認作業が大幅に短縮されます。
情報を整理することは、将来的な「所有者不明土地」の発生を防ぐ公的な意義を持つとともに、実務においては再依頼時のリードタイム短縮というメリットをもたらします。
▼ 土地家屋調査士業務支援ソフト「TREND REX」の導入事例
3.2 現地記録の共有体制を整え、申請準備を効率化する
住所変更等の登記義務化は、2024年に施行された相続登記義務化の流れを汲む制度改正です。これにより、相続や住所変更に伴う権利関係の変動が、これまで以上に頻繁に登記記録へ反映されるようになります。土地家屋調査士にとっては地目変更登記や建物表題登記における確認精度の向上、測量業者にとっては用地測量や境界確認に必要な関係者情報の整理という面で、現地記録と権利関係を結び付けて管理する重要性が高まります。
具体的には、現地調査時の写真や記録をクラウド等で共有し、事務所内のスタッフや連携する司法書士がリアルタイムで確認できる体制が有効です。住所変更の有無を早期に特定できれば、表示に関する登記と権利に関する登記の連件申請の段取りをスムーズに行うことができます。法務省も、所有者不明土地の解消に向けて不動産に関するルールの見直しを進めており、正確な情報に基づく登記申請は、こうした国の施策とも合致します。法務省:所有者不明土地の解消に向けた不動産に関するルールの見直しについて
また、境界立会い等の場面でも、最新の住所情報に基づいた通知が可能となり、境界確定測量の円滑な進行が期待できます。制度改正を負担と捉えるのではなく、情報の鮮度を高め、業務品質を向上させる好機と捉える視点が重要です。
▼ 測量業、土地家屋調査士向け スマートフォン観測アプリ「FIELD-POCKET」
4. まとめ
2026年4月1日より施行された住所等変更登記の義務化は、所有者不明土地問題の抜本的な解決を目指すものであり、不動産登記情報の信頼性を大きく向上させる転換点となります。測量業や土地家屋調査士の実務においては、所有者の所在確認が容易になることで、境界確定や立会い要請といった業務プロセスの効率化が期待できるでしょう。この改正は単なる規制強化ではなく、実務環境を改善する前向きな機会と捉えることができます。
また、検索用情報の申出やスマート変更登記の仕組みにより、登記情報の更新は従来よりも継続的かつ効率的に行われる環境へと移行しつつあります。
制度施行後の現在において確認すべきなのは、社内の情報管理体制が現行の法制度に即しているか、そして顧客に対して適切なタイミングで住所変更の必要性を案内できるフローが整っているかという点です。正確な登記情報を維持・活用する体制を整えることは、将来的なトラブルを未然に防ぐだけでなく、専門家としての信頼性を高めることにもつながります。法改正の趣旨を踏まえ、実務に即した対応を着実に進めていきましょう。
製品の詳細・オンラインデモのご案内
本記事で紹介した課題に対し、福井コンピュータでは業務フローに合わせた製品、運用方法をご提案できます。 「まずは画面を見たい」「自社に合うか相談したい」「費用感を知りたい」など、状況に合わせてご相談ください。
※ご相談は無料です。状況確認のうえ、最適なご案内をいたします。

