1.BIM/CIMの定義と施工CIMへのパラダイムシフト
BIM/CIM(Building / Construction Information Modeling)とは、建設プロジェクトにおける調査・設計・施工・維持管理といった一連のプロセスを通じて、3次元モデルと属性情報を紐付けて一元的に管理する手法です。
国土交通省は2012年度からCIMの試行を開始し、2018年度以降は建築分野のBIMと土木分野のCIMを統合的に扱う考え方として、「BIM/CIM」という表記・概念を明確化しました。さらに、2023年度からはBIM/CIMの原則適用が開始されています。
これにより、施工段階でCIMを活用する、いわゆる「施工CIM」が本格的に普及し始めています。
1-1.施工フェーズにおけるBIM/CIMの発注状況
BIM/CIMの原則適用が進む中で、施工フェーズにおけるBIM/CIM活用についても、近年では積算への活用も対象となるなど、要求内容が高度化しています。
国土交通省直轄工事においては、施工段階での3次元モデルの作成や活用が必須となっています。
特に、施工計画の検討や関係者間の合意形成への活用を目的として、施工フェーズでのBIM/CIM活用が位置付けられるケースが多く見られます。
1-2.「見るモデル」から「使うモデル」への転換
施工段階におけるCIM活用とは、単に図面を立体化することではありません。施工手順のシミュレーションや干渉チェック、出来形管理など、現場運営における意思決定を支援するツールとして3次元モデルを活用することに本質があります。
設計から施工へとデータを途切れさせずに連携させることで、3次元モデルは施工CIMの中核として、建設DXを支える基盤の役割を果たします。
2.3次元データ活用による現場管理の高度化
施工CIM(BIM/CIM)の本格的な普及に伴い、3次元モデルを現場運営における意思決定支援ツールとして活用する動きが加速しています。
具体的には、施工手順のシミュレーションや安全管理など、施工管理全体で3次元データを活用することで、現場全体の生産性向上に寄与します。ここでは、3次元データの活用が現場管理にどのような変革をもたらすのか、その具体例を交えながら解説します。
2-1.リスクの事前予測と安全性の向上
3次元モデルを活用する大きなメリットの一つは、施工前にリスクを可視化できる点にあります。複雑な構造物の配筋や配管の納まりを3次元上で確認する「干渉チェック」により、設計図面だけでは発見が難しい不整合を事前に検知できます。
こうした取り組みは、調査・設計段階で課題を把握し、後工程での手戻りや追加対応を抑制する「フロントローディング」の考え方につながります。BIM/CIMでは、設計段階から3次元モデルを活用することで、従来は施工段階で顕在化していた課題を前倒しで検討できるようになります。
また、安全管理の面においても3次元データは有効です。危険予知活動(KY活動)において、作業員が現場状況を3次元モデルで共有することで、危険箇所を直感的に把握できます。重機の死角や開口部の位置などを事前にシミュレーションし、具体的な対策を講じることで、現場の安全性向上につながります。
2-2.施工ヤードの可視化と工程調整
施工ヤードの計画においても、BIM/CIMは大きな効果を発揮します。3次元モデル上にクレーンやバックホウなどの重機モデルを配置し、稼働範囲や旋回半径をシミュレーションすることで、合理的な配置計画を立案できます。資材置き場や仮設道路についても、周辺地形データと組み合わせることで、精度の高い計画が可能となります。
さらに、3次元モデルに時間軸の情報を加えた4Dシミュレーションを活用すれば、工程の進捗に伴う現場状況の変化を可視化できます。これにより、工程調整が円滑になり、手待ち時間の削減や作業効率の最適化につながります。
3.BIM/CIMの実効性を高める技術と今後の課題
施工CIMの実効性を高めるためには、単に3次元モデルを作成するだけでなく、現場の物理的な情報や景観をデジタルデータとして取り込み、実務で活用できる形で管理・共有する仕組みが不可欠です。近年では、クラウドプラットフォームやモバイル端末の普及により、現場にいながら3次元モデルを確認・活用できる環境が整いつつあります。
3-1.ドローン・レーザースキャナとの融合
ドローン(UAV)や地上型レーザースキャナ(TLS)を用いた3次元測量技術は、建設現場で急速に普及しています。これらにより取得された高密度な点群データをBIM/CIMモデルと重ね合わせることで、出来形確認や施工進捗を視覚的かつ定量的に把握できます。
このようなデータ連携により、設計モデルを基に施工し、その実績を点群データとしてモデルに反映する循環型の運用が実現し、検査作業の省力化や手戻りの防止に寄与します。
3-2.「モデルを納品する」から「使い倒す」時代へ
施工CIMが本格化する中で重要なのは、施工フェーズにおける日々の施工管理業務で3次元モデルを継続的に活用することです。
近年では、クラウド型のデータプラットフォームを活用し、施工計画や進捗、出来形といった施工管理情報を3次元モデルとひも付けて一元管理する取り組みが進んでいます。
さらに、施工段階で蓄積されたデータを基に、AIを活用した進捗把握や出来形確認の支援など、施工管理の省力化・高度化も期待されています。3次元モデルは、施工管理を支える実務基盤として、その価値を一層高めていくでしょう。
また、国土交通省が公開しているBIM/CIMポータルサイトでは、基準・要領に加え、研修コンテンツや活用事例も多数掲載されており、実務における理解を深めるうえで有用です。
【User's Voice】福井コンピュータ×金杉建設株式会社(埼玉県春日部市)/TREND-POINT/TREND-CORE/TerraceAR/BIM/CIM活用/建設DX
4.まとめ
本記事では、BIM/CIMの基本的な考え方から施工CIMへの移行、施工フェーズにおける具体的な活用方法までを解説しました。BIM/CIMは単なる3次元モデルの作成にとどまらず、施工管理を高度化するための重要なデータマネジメント手法として位置付けられています。
施工段階においては、3次元データを活用したリスクの事前把握や施工ヤードの可視化により、安全性や品質の向上が期待できます。
今後の建設現場に求められるのは、「納品のためのBIM/CIM」から脱却し、施工管理でデータを継続的に活用する「使い倒す施工CIM」への意識転換です。施工フェーズを中心としたデータ活用を定着させることが、生産性向上と持続的な現場改善につながっていくでしょう。
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