1.道路設計の現場が直面する課題
道路設計は、限られた条件の中で安全性や機能性、経済性を同時に満たすことが求められる業務です。近年では、社会環境の変化やインフラの高度化に伴い、設計段階で検討すべき要素が増加しています。
その結果、設計者に求められる判断や調整の難易度は一層高まっています。
1-1.設計条件の複雑化と判断負荷の増大
道路設計の現場では、線形や構造物、排水計画など複数の要素を同時に成立させる必要があり、設計条件は年々複雑化しています。さらに、既設構造物や地下埋設物との取り合い、周辺環境への配慮など、検討範囲も拡大しています。
このような条件下では、相互に影響し合う要素全体を俯瞰しながら調整する必要があり、設計者にかかる判断負荷は増加しています。
1-2.2次元設計手法における限界と手戻りの発生
従来の2次元図面を中心とした設計では、平面図・縦断図・横断図を読み替えながら全体像を把握する必要があり、設計内容の理解や判断が設計者の経験に依存しやすい傾向があります。
また、現況の把握が限定的であることから、設計段階での検討や修正は従来から繰り返し行われてきました。
特に、施工段階において現況と設計の不整合が顕在化した場合には、設計変更や手戻りによる影響が大きく、工期やコストへの影響も無視できません。
こうした背景から、設計の前提となる現況把握の精度向上と、設計プロセスの見直しが重要視されています。
2.3次元地形測量の普及
道路設計の前提となる現況把握の重要性が高まる中、従来の航空レーザ測量に加え、地上型レーザスキャナやUAV(ドローン)測量、さらにSLAM技術など、3次元地形測量の手法が広く活用されるようになってきました。
これにより、高密度かつ広範囲の地形データを取得できるようになり、現況把握の精度は大きく向上しています。
2-1.高密度な点群データによる現況把握の高度化
3次元地形測量で取得される点群データは、地形や構造物を面的かつ立体的に捉えることができます。従来の測量成果では把握が難しかった微地形や構造物の位置関係についても、設計初期段階から視覚的に確認することが可能です。
2-2.測量成果の活用範囲拡大と設計への影響
点群データは、設計段階で必要に応じて断面を切り出すなど、柔軟に活用できる点が大きな特長です。そのため、設計途中で条件変更や追加検討が生じた場合でも、再測量を行うことなく対応できるケースが増えています。
測量成果を3次元データのまま設計に引き継ぐことで、情報の欠落や解釈違いを防ぎ、測量から設計へのデータ連携がより円滑になります。
3.3次元活用とBIM/CIMがもたらす道路設計の変革
3次元地形測量の普及により、設計の前提となる現況を高精度に把握できるようになったことで、道路設計の進め方にも変化が生じています。
従来は2次元図面をもとに設計を行い、施工段階で現況との不整合が顕在化するケースも少なくありませんでしたが、3次元データを活用することで、設計段階からより実態に即した検討が可能となります。
こうした変化の中で、BIM/CIMは単なる3次元化にとどまらず、設計から施工までを見据えたプロセス全体の最適化を支える考え方として位置づけられています。
3-1.空間的な把握による設計品質の向上
3次元モデルを活用することで、線形や構造物、排水施設、地形との関係性を立体的に把握することが可能になります。
これにより、設計内容の理解や関係者間の認識共有がしやすくなり、設計段階での干渉確認や成立性の検証の精度が向上します。
また、従来は平面図や横断図をもとに推定していた測点間の形状についても、点群データを活用することで実際の地形に即した形で検討できるため、現況とのズレを抑えた設計が可能となります。
3-2.フロントローディングによる設計プロセスの改善
BIM/CIMに基づき、設計初期段階から3次元データを活用することで、施工段階で顕在化しやすい課題を事前に洗い出すフロントローディングが可能となります。
これにより、施工段階での設計変更や手戻りの抑制につながり、工期への影響を低減することができます。
さらに、こうした手戻りの削減は、事業全体としてのコスト削減にも寄与するものであり、特に発注者側にとって重要な効果となります。
3-3.BIM/CIMを活用した道路設計の具体的な事例
例えば、起伏の大きい地形における道路設計では、点群データを基に線形や構造物を3次元モデル上で検討することで、地形との適合性を高い精度で確認できます。これにより、切土・盛土計画の妥当性を設計段階で検証しやすくなります。
また、市街地部の道路設計では、地下埋設物や既設構造物との干渉を3次元モデル上で把握することで、施工段階での設計変更リスクを低減することが可能となります。
▼ 点群データとBIM/CIMを活用した道路設計の3D化事例
4.まとめ
道路設計における課題は、設計条件の複雑化だけでなく、現況把握の精度や設計と施工の間に生じる不整合にも起因しています。
従来の2次元図面を前提とした設計では、こうした課題が長年にわたり残ってきました。
近年では、地上型レーザスキャナやUAV測量、SLAMなどの3次元地形測量技術の普及により、現況を高精度に把握できる環境が整いつつあります。
これにより、設計段階から実態に即した検討が可能となり、施工段階での設計変更や手戻りの抑制につながることが期待されています。
さらに、BIM/CIMを活用した設計プロセスの導入により、フロントローディングの考え方に基づいた事前検討が進み、工期の安定化や事業全体のコスト削減といった効果も見込まれます。
今後は、3次元地形測量とBIM/CIMを前提とした設計プロセスを定着させることが、道路設計の品質向上と生産性向上において重要なポイントとなるでしょう。
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