教育

栃木県立宇都宮工業高等学校

教育

最先端を行く科学技術高校の挑戦
若者達が切り拓く IT測量の世界

2011年、栃木県立宇都宮工業高等学校は、栃木県が進める「科学技術高校整備基本計画」により、 最先端の設備・機器を備えた科学技術高校として生まれ変わりました。測量分野でも最新のトータルステーションはもちろん「BLUETREND XA」や「XYCLONE」等を導入。これらを活用して授業を行っています。同校における教育の現状と今後の展開について、村上英二先生に伺います。

企業と同レベルの先端的施設・設備

ご担当の学科をご紹介ください

村上

本校には、機械システム系、電気情報システム系、建築デザイン系、環境建設システム系の4系・7学科があります。私が担当する環境建設システム系は、環境保全や建設技術全般を学び、建築設備や土木構造物の設計・施工に関する知識・技能の習得を目指しています。この環境建設システム系には、環境設備科と環境土木科の2学科があり、環境土木科はさらに土木施工コースと土木設計コースの2つに分かれます。現在、1年次は2クラス80名の生徒がおり、環境設備と環境土木双方の基本的な内容を学びながら1年間かけて科・コースを選択していきます。

「BLUETREND XA」で行うCAD実習

環境土木科の2コースはどのような内容ですか?

村上

土木施工コースは道路や橋など土木の計画、設計、施工に関する知識・技術を学ぶコースで、特に土木施工を深く学習します。目指す人材像は「ものづくり」できる人材、現場監督として即戦力で活躍できる人材ですね。一方、土木設計は特に土木設計について深く学ぶコース。こちらは「ものづくりの仕方」を考える人材、CADで設計できる人材の育成を目指しています。

最新機器での実習が特徴ですね?

村上

ええ、卒業後も即戦力として活躍できる技術・技能を身に付けるには、企業と同レベルの先端的施設、設備を活用した実習が欠かせません。そこで県立校としては最高レベルの最新機器、設備を整えています。たとえば測量関係では、まずトータルステーションが8台。うち4台は自動追尾型で、もちろん電子平板(XYCLONE)も4セットあります。また3Dレーザースキャナなどは、高校での導入は全国初かもしれませんね。またCADは測量CAD(BLUETREND XA)と土木CAD(EX-TREND武蔵)を各12セット用意してあります。もちろんパソコンは一人1台の環境です。

機器の選定についてはどのように?

村上

栃木県の建設土木業界、測量業界に広く普及している製品ということを重視しました。生徒が地域産業に就いた時、この機械を使ったことがあるとなれば、その子にとってもその会社にとっても大きなメリットですからね。福井コンピュータのCADや電子平板を選んだのも同じ理由で、現在も将来的にも、この業界で福井コンピュータ製品が一番使われていると判断しました。

実習内容はどのようなものですか?

村上

環境土木科1年次の場合では、1クラス40名を各10名1グループの4班編成として実習を行っています。1年生はまずガス溶接、管工事、そして水準測量といった内容を4週間ローテで行います。土木系ではトラバース測量、トータルステーションや電子平板も1年のうちに体験します。そしてアーク溶接や配管実験、地形測量。最後にCADの基本をやって1年の実習が終了します。盛り沢山な内容ですが、1月には環境設備科か環境土木科か2年次の科を選択してもらうので、このカリキュラムを12月までに終えるようにしています。

まず土木測量の世界への興味を養う

自動追尾型のTSと「XYCLONE」を使った実習

昔のカリキュラムとはかなり違いますね

村上

そうですね、以前はとにかく「基礎基本」重視でした。まずは原理原則を理解するということで、教科書の内容をきっちり学んでから外へ出る形でした。しかし新しい学校では発想を180度変え、まず生徒に土木への興味を持ってもらえるような「動機付け」「意識付け」を大切にしています。そこで最初から最先端機器にどんどん触れさせ、同時に現場の話をしたり、企業に協力してもらい現場見学に行ったり、あるいは大学の先生をお招きして土木と設備の仕事の話をしてもらったり……。そうやって 「測量とはこんな世界なんだ!」「こんな機械でこんなことをやってるんだ!」と実感してもらい、「では、こんな方向に進んでいこう」と考えてくれれば、と思っています。

生徒たちの反応はいかがですか?

村上

非常に良いですね。子どもたちはDS世代ですから、パソコン等については私たち以上に馴染んでいます。たとえばトータルステーション等でも、電子平板と合わせて使わせると一発で理解するんですよ。測点を取った形が四角くなってきたら「じゃ面積は?」と操作し、パッとでると「ウォーッ!」(笑)。実習後も「凄い!」と興奮気味の感想が多かったです。密度の濃い授業で生徒も教師も大変ですが、それだけの効果はありました。

先生方も大変だったんですね

村上

従来の機器は私たちも使いこなしていますが、新しい機械は勉強会を開いて我々教員が操作方法等を習得しました。ですから準備段階は夏休みも冬休みも毎日が研修でしたね。でも、先端機器に触れたのは良かったですよ。教師は「井の中の蛙」になりがちなので、新しい機器に触れ、メーカーの担当者や業界団体の方、大学の先生らと交流できたことはとても大きな刺激になったと思います。私自身も測量会社や福井コンピュータの協力のもと、最先端の機器を使った測量を実際に実務として体験し、指導の幅も広げられた気がします。

路線測量の授業

将来展開として何かお考えですか?

村上

生徒たちが外部から実際に仕事を受けて、成果を上げるような機会が作れるといいですね。たとえば地域の施設の平面図を作成するなどして、地域貢献を図っていくとか・・・。また、せっかくこれだけの最新機器が揃っているのですから、当校が1つの情報発信基地になれれば良いとも思ってます。地域の産業に就いた卒業生が「この新しい機械、どう使えばいいんだ?」と折りに触れて聞きに来るような・・・そんな環境ができれば、人材育成にも繋がり、地域の産業発展にいっそう貢献できるのではないでしょうか。それには、私たちもどんどんスキルアップしなければなりません。まさに永遠の課題ですね。

※2012年発行のWind/fで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。

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村上 英二環境建設システム系 環境土木科 教諭 系長 科長

栃木県立宇都宮工業高等学校

開 設
1923年
所在地
栃木県宇都宮市
設置学科(全日制)
機械科、電子機械科、電気科、電子情報科、建築デザイン科、環境設備科、環境土木科
事業内容
各種測量事業など地理空間情報サービスほか

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