スマホで手軽に操作できる「日々使いツール」が土木&建築現場の測量作業を変えていく
必要となるのはスマホと小型のプリズムだけ。まさに最強の「日々使い」ツールなのです。
3年後に創立70周年を迎える日豊工業(栃木県宇都宮市)は、建築・土木両分野に豊富な実績を持つ総合建設会社である。この地域で「品質の日豊」として知られる同社は新技術導入にも熱心で、早くからBIMへの挑戦を開始。EX-TREND武蔵、J-BIM施工図CAD※、さらにFIELD-TERRACE、CIMPHONY Plus等を導入し、建築土木の両分野で現場IT化を進めている。その背景と狙いについて、同社取締役の轟氏、工事本部の若樹氏、石丸氏にお話を伺った。(※J-BIM施工図CADは、福井コンピュータアーキテクト社の製品です)
きっかけは福井コンピュータ製品
- 現場IT化に積極的にお取組みですね
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轟氏
そうですね、会社としても力を入れています。実はこの取り組みの背景にあるのは、当社の人員不足と従業員の年齢構成に関わる問題です。現状、当社の従業員は50~60代が最も多くなっています。採用努力によって10~20代も増えつつありますが、本来主力となるべき30~40代の中間層が手薄のままなのです。そこで、次代の主力となる10~20代の若手にITを使わせて作業効率を向上させ、少数の若手でも熟練者と同等の仕事量をこなせるように育てていきたい……そう考えています。
- 土木部門の現場IT化のきっかけは?
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若樹氏
実は最初のきっかけとなったのは、福井コンピュータ製品なんです。当社ではかなり以前から、その強力なデータ変換機能の利用を目的に、EX-TREND武蔵(以下 武蔵)を導入していました。実際、現場ではデータ変換の利用が中心で、CADとしてはあまり使っていませんでした。しかし最近、せっかく導入したのだから活用しようという声が高まり、福井コンピュータに依頼して改めてデモンストレーションを見せてもらいました。結果、大いに驚かされ、そこから本格的な現場IT化が始まりました。
- デモに驚かされたというのは?
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若樹氏
武蔵CADを使うと、たとえば座標と図面の連携等の作業がすごくスムーズにできるんですよ。当社ではJw_cadを使っていましたが、たとえば役所から図面をいただくとまず自分用に座標を変換し、さらに欲しい点をプロットしたものを吐き出して、これを測量ソフトに読込ませて計算して……という大変な手間をかけていました。ところが、武蔵CADで行うと、これが1回で全て完結してしまうんですね。作業時間も半分以下と劇的に短縮されると分かり、即座にCADは武蔵に!となったわけです。
- 建築部門はBIMとの出会いがあったとか
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石丸氏
ええ。建築分野としての取り組みは、私が8年前に偶然「BIM」というキーワードを耳にし、興味を持ったのが始まりです。当時はさほど深く考えませんでしたが、さまざまなBIM製品に触れ体験版を使ううち興味が強まり、やがて「施工現場でBIMや3次元を活用するにはどうすべきか?」考え始めました。最初に導入したのはJ-BIM施工図CADです。BIMへの挑戦は初めてなので轟部長とも話し、事前に検証しメリットを確認した上で導入しました。
- 導入効果を事前に検証したのですか?
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石丸氏
ええ。ある現場で私が積算段階から2DCADで図面を描いて数字を拾い、積算して見積りを作ってみました。そして、福井コンピュータに依頼してJ-BIM施工図CADで同じ作業をやってもらい、両者を比較したんです。すると、私がJw_cadを使い約14日かかった作業が、J-BIM施工図CADではわずか3日で全て完了しました。この結果が「作業効率の向上」という社の方針にも合致したわけですね。もちろん海外のBIM製品も試用してみましたが、どれも設計向けのBIMソフトという印象で……。当社のように施工サイドで使うのであれば、「3Dモデルよりも施工図に特化すべき!」という考えから、J-BIM施工図CADを選びました。
軽くて使いやすい最強の「日々使い」
- FIELD-TERRACE導入のポイントは?
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若樹氏
「日々使い」としての使い勝手の良さですね。当社の土木部門では、GNSS受信機やトータルステーションのコントローラーとして使える他社製ハンディデバイスを使用していました。ところが、これがけっこう大きく、しかもプリズムやリモコンのシステムも必要なので、1人で装備して動くと相当重く、大変なのです。ところがFIELD-TERRACEはスマートフォン一つで、他に必要なのは小型のプリズムだけ。しかも操作感も良く、すぐに「日々使い」のツールとして導入しよう!と思いました。
- 「日々使い」のツール?
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若樹氏
FIELD-TERRACEの強みは、圧倒的な機動性の高さや軽さ、使い勝手の良さにあります。これは事務所での作業でも同様で、武蔵との親和性も非常に高いんですね。たとえば現場で採ったデータをすぐSIMAとして吐き出し、武蔵に読込ませて図面へ反映させ、さらにその図面をFIELD-TERRACEに表示して測設も……一連の作業がとてもスムーズで、現場のカーナビみたいな感覚で使えます。まさに日々の業務で使いやすい「日々使い」なんです。その意味では写真管理業務に使用している「どこでも写真管理Plus」も「日々使い」ツールですね。これも操作はきわめて簡単ですが、毎日の写真管理の仕事がたいへん効率化されて、助かっています。
- 「現場のカーナビ」とは面白いですね
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若樹氏
とにかく「いま自分がどの位置にいるのか?」即座に分かるというのはとても重要なことですから。境界関係も「境界を侵していないか?」リアルタイムで確認できますしね。
- 作業効率の向上に繋がりましたか?
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若樹氏
ええ、他社製品と比べると、体力的に疲れない点が一番大きいと思います。効率面ではトータル2~3割は時短できているし、かつてのデジタル平板測量時代に比べたら、さらに雲泥の差でしょう。以前だったら2人でポイントを置いて合わせて、覗いて記録して……と、2人がかりで3日かけて測量していた現場でも、FIELDTERRACEなら1人で半日もあれば全部できますから。とは言え、測量作業全てをこれでやろうというわけではありません。現場着手時の精度が必要な測量や観測距離が長い所では従来通りトータルステーションを使い、そこからデータを起して図面を完成させたら、以降は日々使いとしてFIELD-TERRACEを使っていく……そんな使い分けが最適だと考えています。
営繕工事の常識を逸脱した手法に挑戦
- 建築でもFIELD-TERRACEをお使いに?
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石丸氏
はい、建築ではある時期から新しい現場の敷地の測量を土木部門に依頼するようになっており、当初は採ってもらったデータで建物の位置を出すためだけに使っていました。ところが今回、県発注の工事で総合評価が適用されることになり「何をすれば受注できるか?」考える中で、思いついたのが3次元データの活用でした。そして、結果的にこれが、FIELD-TERRACEの本格的活用の始まりとなりました。
- 具体的にはどんな風に活用を?
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石丸氏
まず考えたのは、FIELD-TERRACE等を用いて取得した3次元座標データを、鉄骨構造物の取付精度向上に活かすアイデアです。要は建て入れ精度の管理ですね。まず、データをどのように取得し管理していくか、若樹からレクチャーを受け、取扱い方法を学びました。そして、これを活かして、従来の営繕工事の手法から逸脱したようなやり方にもどんどん挑戦していったわけです。
- どのようなチャレンジを?
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石丸氏
たとえば根切りにおいては、職人さんに掘ってもらう位置を示すため地面にアウトラインを引かなければなりません。通常はトランシットを使って線を描きますが、これを3次元座標データを使ってやろうと考えました。床面積800㎡ほどの現場で通常なら2日以上かかりますが、新入社員と2人でFIELD-TERRACEを使ったら3時間で終わりました。他にも鉄骨建て入れの精度管理やコンクリート床の精度管理等々でも成果を上げましたね。特に後者はお客様からも「非常に不陸が無くて素晴らしい出来です!」とお讃めの言葉をいただいたほどです。
(取材2021年9月)
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