BIM/CIM時代へ向う現場イノベーションを推進 TREND-CORE VRで見せる「現場の未来」
TREND-CORE VRで「現場の未来」を見ることで 自分が「現場でやっておくべきこと」も見えてくる
東京都港区に東京本社を置く大本組は、創業1世紀余の歴史を持つ総合建設会社である。長年にわたり無借金経営を続ける堅実な経営姿勢と高い技術で厚い信頼を獲得している。そんな同社では、2014年から現場IT化の取り組みを本格化。現在はBIM/CIM普及へ向けた施策を急ピッチで進めている。特TREND-COREとTREND-CORE VRによるVR運用など、現場における最新技術の活用にも積極的だ。取り組みの詳細について、東京本社土木部の浅賀泰夫氏と西田静宣氏にお話を伺った。
TREND-CORE VRで現場イノベーション
- 現場IT化の取り組みはいつ頃からですか
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浅賀氏
私自身は、2008年頃には当時フリーソフトだったSketchUpを使って構造物等の3Dモデルを作り、これを提案や打合せに使っていました。ただしこれはあくまで自主的な取り組みで、会社としての展開は2014年頃になります。ちょうど私も内勤から現場配属となったこの時、現場へのiPad導入が本格的に始まったんです。2017年には現場の生産性向上のためのツール導入を目指す議論が活発化し、ワーキングが生まれて、私も現場からこの活動に参加しました。そして、2018年に土木の現場職員全員にiPhoneが配布されて、クラウドやチャットツール、ノートツールの活用も開始。さらに2019年に3D CADとVDIが導入されて、現場作業所で3Dを扱える環境も整ったわけです。
- 3D CADはスムーズに普及しましたか
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浅賀氏
実は当初、導入されたのが海外製の3Dツールだったため、その使い難さもあって、どうしても限られた職員しか活用できないような状態が続きました。そのため現場での3Dデータの活用もなかなか進まなかったのですが……この状況を変える一つのきっかけとなったのが、施工計画を立てる上で非常に有効なツールのTREND-COREと仮想空間でリアルに現場を体感できるTREND-CORE VRを用いた全く新しい取り組みです。
- どのような取り組みでしょうか
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浅賀氏
既設の橋脚に近接した現場で鋼管矢板を打つ護岸建設の現場です。接触防止などどのような安全対策をするか、周囲からどのように見えるかなどが課題となりました。そこで対応策を当社の技術課で検討してもらい、3Dモデルを用いたVRを試しました。TREND-COREは導入済みだったので、追加でTREND-CORE VRを導入。実際にVRを使ってみたところ、これが非常に有効で……しかも、TREND-COREなら2D図面から手軽に3Dモデルを作成できると分り、現場への導入を拡大しました。現在は現場職員の底上げを目指しTREND-CORE教育に着手しています。
- この現場でのTREND-CORE VRの具体的 な運用をご紹介ください
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浅賀氏
まず橋脚側と道路側から、現地を全て3Dスキャンして点群を取り、次にTREND-COREで構築物および実際に施工するマシン等のモデルを作りました。そして、現場の地形モデルへそれらを配置し、現場の施工イメージを作成。これを用いてTREND-CORE VRで関係者に「仮想現場」を体感してもらいました。その上で事前検討として前述した橋脚との離隔等をシミュレーションし、たとえば「高さ制限をどうするか?」「仮設をどう配置していくか」などを確認しました。その結果を反映した内容を元に施工検討会を実施しています。現在はコロナ禍により、こうした会議もWEBが主流となり皆が集まって行うことはありません。だからこうして作った動画で現場状況を見てもらってから議論することが多くなっています。
「現場の未来」を見せる
- VRの導入効果はいかがですか
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浅賀氏
導入効果は非常に高かったと実感していますし、その活用法についても徐々に広がりを見せています。たとえば現場の作業員さんたちに対しては、やはり「何が・どれだけ危険か?」きちんと認識を持ってもらえたことが一番の狙いであり成果でした。一方、協力業者の職長レベルの方に対しては、彼らが出した計画図が「実際に全体に適応しているか?」計画の妥当性について確認してもらいました。もちろんこうした確認は以前から行っていましたが、VR体験の導入により「これは無理でしょ?」とか「安全じゃないな」といった状況を、よりはっきり認識してもらえるようになったと思います。もちろん当社職員に対しても同様に「確実に伝わっている」という実感がありますね。東京本社が管轄する東日本の現場では2年以上災害が発生していません。VRが今後の継続につながれば。
- 教育的な効果もあったと聞きますが?
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浅賀氏
ええ、特に若手職員に対して非常に有効だと思います。というのは、若手……特に新入社員の場合、現場経験というものがありませんから、一週間後あるいは一カ月後に「どういう現場状況となっているか?」、なかなか思い浮かべられないんですね。思い浮かばないから何が危険か分からないし、何をすべきか分からない。でも、TREND-CORE VRを使えば、誰でも一週間後・一カ月後の「現場の未来」を見せて、体感させることができるわけです。
- 「現場の未来」を見せることの効果とは?
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浅賀氏
たとえば「コンクリートポンプ車のブームってこう動くんだ」「じゃ、足場が邪魔で伸ばせないのか?」、「だったら、ポンプ車の型式は検討しなくちゃ」等々、現場の未来を見ることにより自分がやっておくべきことも見えてくるのだと思うのです。最近よく使われる言葉で言えば「知識経験のDX」という所でしょうか。私見ですが「未来」を見せれば「技術の伝承」など必要ありません。その「未来」と全く同じものを同じように、現実に作っていけば良いわけですから……。また、このやり方は熟練者の力を生かす上でも有効です。たとえば、当社では支店の土木部長に現場の安全パトロールをしてもらうことがあるのですが、未来の現場の安全パトロールを実際にやっていただきました。「ここに通路が必要だね」とか「こんな所にこれを置いちゃダメだよ」とか、事前に具体的な指摘をしてもらうわけです。これもたいへん有効ですよ。
- TREND-CORE等のソフトを持たない外部 の方とのやりとりは?
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浅賀氏
CIMPHONY Plusというクラウドサービスを活用しています。ソフトを持たないお客様や協力業者とのBIM/CIMモデル共有のプラットフォームですね。クラウドサービスもいろいろありますが、TREND-COREからワンクリックでアップロードできる手軽さがあり、見る側も普通にブラウザで見られるんです。手軽に使えて非常に便利なやり取りツールという感じです。
FC製品が使える職員を増やしていく
- 職員教育は西田様が担当したそうですね?
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西田氏
私はもともと事務職で現場もCAD操作も知りません。最初は冗談かと思いましたが(笑)直接教えていただいたので何とか習得できました。講師として多くの方の質問に答えることが、そのまま自分の勉強にもなりましたね。
- 現場職員への普及教育はどのように?
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西田氏
教育はまず対面とZoomによるリモートで行います。内容は福井コンピュータが用意しているコンテンツを元に、基本的な操作方法を学んでいただき、簡単なモデル作成から重機・保安設備等の部品配置。そして3面図機能から下部工作成や座標合わせ、Google Earthへの出力等々をやってもらいます。また、教育後の課題は実現場の橋脚図面と座標を与えてKMZファイルで提出してもらった上で個々にフォローしました。総計3時間ほどの講習で大抵の方が基本操作を習得されます。CAD経験があれば、早い段階で使えるようになる方も多いですよ。
- 今後のご計画は?
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浅賀氏
とにかく令和5年には公共工事の発注図面がBIM/CIM対応になるので、現場でもそれが扱えるようにしていく必要があります。そのためのツールは海外製BIMツールよりも、軽くて操作しやすい福井コンピュータ製品が最適ですから、これを使えるメンバーをどんどん増やしていきます。現場への教育はまだ初級編の段階なので、今後はキーマンを育てて中級編、上級編と進めていく計画です。また、個人的には、現場で使える新しい技術にどんどん挑戦していきたいと考えています。実は先日もある現場でiPhone ProのLiDARスキャナとTREND-COREを用いて土量計算を行ってみたのですが、これがけっこう使えるので驚きました。近い将来はこの手法を応用した土量管理が一般的になるでしょう。
(取材:2022年1月)
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