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3DGSデータはどう作る?
撮影方法ときれいに再構築するポイントを解説

2026.09.28

3D Gaussian Splatting(以下「3DGS」)は、複数の写真から現実の物体や空間を3次元的に再構築し、写真に近い写実的な見た目で描画できる技術です。

これまでの記事では、3DGSの基本的な仕組みや点群・NeRFとの違いに加え、デジタルアーカイブや観光、製造、XRなど、さまざまな分野における3DGSの活用方法について解説しました。

では、実際に3DGSデータを作成するには、どのように対象を撮影すればよいのでしょうか。

一般的な3DGSの生成では、スマートフォンやデジタルカメラなどで対象をさまざまな位置から撮影します。撮影した複数の画像からカメラの位置や対象物のおおまかな形状を推定し、その情報を基に3次元空間を再構築していきます。

そのため、対象物の撮り方や撮影時の光、画像同士の重なり方によって、生成結果の品質は大きく変わります。

特に、撮影できていない部分や画像同士の対応関係を見つけにくい部分では、形状の欠落や、空中に浮かぶようなノイズが発生することがあります。

本記事では、これまで紹介してきた3DGSを実際に作成する「実践編」として、データ作成の基本的な流れから、撮影機器の選び方、対象物をきれいに再構築するための撮影方法、生成時に注意したいポイントまでを解説します。

1.3DGSデータを作成する基本的な流れ

3DGSデータの作成は、大きく「撮影」「カメラ位置の推定」「3DGSの生成」「結果の確認」という流れで進みます。

まず、対象物や空間を複数の位置から撮影します。次に、それぞれの写真がどの位置や方向から撮影されたものかを解析し、対象物のおおまかな3次元形状を求めます。

その情報を基に、3次元空間上に多数のGaussianを配置し、入力画像に近い見た目になるよう調整していきます。

一般的な3DGSでは、この前段階でSfM(Structure from Motion)と呼ばれる技術が使われ、カメラ位置と「疎な点群」が生成されます。ここでいう疎な点群は、レーザースキャナなどで取得する計測用の高密度な点群とは異なり、3DGSを生成するための初期情報として使われます。

1-1.撮影に使用できる機器

3DGSの撮影には、スマートフォン、デジタルカメラ、ドローン、360度カメラなどを使用できます。

小さな物体や室内、身近な構造物を試験的に撮影する場合は、スマートフォンから始める方法が比較的手軽です。スマートフォンでも十分に試すことができますが、画質だけでなく、対象物を安定して撮影できることが重要です。

デジタルカメラは、高解像度の画像を取得しやすく、細かな装飾や表面の質感を残したい場合に適しています。ただし、撮影途中で焦点距離や画像サイズを頻繁に変更すると、画像同士の関係を解析しにくくなる場合があります。

ドローンは、建築物や構造物の上部、広い敷地、地上から見えにくい場所を撮影する場合に有効です。地上撮影と組み合わせることで、側面から上部まで広い範囲を記録できます。

360度カメラは、室内や通路などの周辺を一度に撮影しやすい一方、一般的なカメラとは画像の投影方法が異なります。使用する3DGS生成環境が360度画像や魚眼画像に対応しているか、事前に確認する必要があります。

1-2.写真撮影と動画撮影の違い

3DGSの入力画像は、写真を一枚ずつ撮影する方法と、動画から静止画を切り出す方法のどちらでも用意できます。

写真撮影は、一枚ごとの画質を確保しやすく、不要な画像を除外しながら撮影できます。その一方で、撮影位置の間隔が空きすぎると、隣り合う画像に十分な共通部分が残らないことがあります。

動画撮影では、対象の周囲を連続的に移動しながら記録できるため、画像の抜けを抑えやすくなります。ただし、移動が速すぎると、手ぶれや被写体ぶれが発生します。また、動画から必要以上に多くのフレームを切り出すと、似た画像が増え、処理時間やデータ量が大きくなる場合があります。

対象物の細部を重視する場合は写真、短時間で空間全体を連続的に撮影したい場合は動画というように、対象や目的に応じて選択します。

2.きれいな3DGSを作るための撮影方法

3DGSの品質を左右する大きな要素が、入力画像の撮影方法です。

3DGSを生成する前段階では、複数の画像に写る同じ特徴を手掛かりとして、カメラの位置や向きを推定します。そのため、画像同士に十分な重なりがあり、同じ部分を複数の方向から確認できる状態が必要です。

3DGSの生成前処理などで利用される「COLMAP」の公式チュートリアルでも、画像同士に十分な重なりを持たせることが推奨されています。

2-1.対象物の周囲を途切れなく撮影する

単体の物体を撮影する場合は、対象物を中心として、その周囲を円を描くように移動しながら撮影します。

一周だけでなく、高さを変えて複数の周回を撮影すると、上面や下面、くぼみなども再構築しやすくなります。

たとえば、最初は対象物と同じ程度の高さから一周し、次に少し高い位置から見下ろすように一周します。必要に応じて、低い位置から見上げる方向も追加します。

建築物や屋外構造物では、対象に沿って少しずつ移動しながら、隣り合う写真に同じ柱や窓、壁面などが残るように撮影します。

撮影位置を大きく飛ばしたり、正面、側面、背面だけを離れた位置から撮ったりすると、画像同士のつながりを解析できないことがあります。

一つの画像から次の画像へ、対象物の見え方が少しずつ変化するように撮影することが基本です。

2-2.距離と向きを変えて死角を減らす

3DGSは、写真に写っていない部分を十分に再現することはできません。

対象物の裏側、上部、狭い隙間、張り出した部分の下などに撮影漏れがあると、その部分が欠けたり、ぼやけたりする原因になります。

全景を捉える写真だけでなく、複雑な形状や細かな部分へ近づいた写真も追加することで、再構築に必要な情報を増やせます。

ただし、同じ場所からズーム操作だけで対象を拡大しても、見る位置は変わりません。対象との距離やカメラの高さを実際に変え、異なる角度から撮影する必要があります。

室内を撮影する場合は、部屋の中央から周囲を撮るだけでなく、壁沿いや出入口付近からも撮影します。壁の裏側へ回り込むことはできないため、部屋や通路が切り替わる場所では、双方の空間が写る画像を連続して残すことが重要です。

2-3.明るさとピントを安定させる

3DGSでは、複数の画像に写った同じ対象物の情報をもとに、色や見え方を再現します。

撮影途中で明るさや色味が大きく変化すると、同じ壁面でも画像ごとに異なる色として記録され、生成結果にむらが生じることがあります。

屋外では、雲の移動によって日なたと日陰が変化する時間帯や、日没前後など明るさが急激に変わる時間帯を避けます。可能であれば、曇天など光の状態が比較的安定した環境で撮影します。

室内では、撮影中に照明を点灯・消灯したり、窓から入る強い光によって一部が白く飛んだりしないよう注意します。

また、カメラを急激に動かすと画像がぶれ、特徴を認識しにくくなります。歩きながら動画を撮影する場合も、対象物を画面内に保ちながら、ゆっくりと一定の速度で移動します。

 自動露出やオートフォーカスを利用する場合は、撮影中に明るさやピントが頻繁に切り替わっていないか確認することが重要です。

3.生成時に起こりやすい問題と改善方法

撮影した画像を3DGS生成ソフトやクラウドサービスへ読み込むと、カメラ位置の推定や3DGSの生成処理が行われます。

使用するソフトウェアによって処理手順や設定項目は異なりますが、生成結果に問題がある場合は、細かな設定を変更する前に、入力画像や撮影方法を確認することが重要です。

3-1.形状が欠ける・一部が生成されない

対象物の一部が欠ける場合は、その場所を写した画像が不足しているか、ほかの画像との重なりが少ない可能性があります。

特に、対象物の裏側や上面、部屋の角、細い部材の周辺では、撮影方向が不足しやすくなります。

生成に失敗した場所を確認し、周辺とのつながりが分かるように、少し離れた位置から近づくまでの画像を連続して追加します。

欠けた部分だけを近距離で撮影しても、既存の画像と結び付けられなければ、別の空間として認識される場合があります。追加撮影では、すでに正しく生成されている部分から、欠けた部分へ移動する流れを残すことが重要です。

3-2.浮遊するノイズやぼやけが発生する

3DGSでは、対象物の周辺に、実際には存在しない「浮遊物」のようなノイズが現れたり、輪郭が二重に見えたりすることがあります。

原因の一つは、撮影中に人や車、樹木の枝、水面などが動いていることです。同じ場所に異なる状態の被写体が記録されると、どの位置に対象を配置すべきか判断しにくくなります。

また、画像のぶれ、ピントのずれ、急激な露出変化も、形状や質感が不安定になる原因です。

 不要な画像や大きくぶれた画像を除外し、動くものが少ない時間帯に撮影し直すことで改善が期待できます。

 背景まで再構築する必要がない場合は、対象物の周囲を整理したり、対応するソフトウェアでマスク処理を行ったりする方法もあります。

3-3.再構築が難しい対象を理解する

3DGSには、写真だけでは再構築が難しい対象があります。

たとえば、ガラスや鏡、光沢の強い金属、水面などは、見る方向によって反射の状態が変化します。画像ごとに異なる景色が写るため、対象物の位置や表面を安定して推定できない場合があります。

模様のない白い壁や、同じ模様が繰り返される床、暗く特徴の少ない空間も、画像間の対応点を見つけにくい対象です。

このような場所では、周辺にある柱、扉、掲示物など、位置を特定しやすい要素も一緒に写します。対象物へ極端に近づかず、周辺との位置関係が分かる画像を含めることも有効です。

建設現場では、単調なコンクリート面、光沢のある配管、濡れた路面、重機や作業員が移動する場所などが該当します。

3DGSは写真に近い見た目で空間を表現することを得意としていますが、距離や高さ、形状を正確に計測することを目的とした技術ではありません。

距離や高さ、形状などを定量的に確認する必要がある場合は、レーザースキャナやLiDARなどで取得した計測点群を利用するなど、目的に応じてBIM/CIMモデルや工事写真などと使い分ける必要があります。

3-4.完成データの確認と活用範囲

また、大規模な空間や高解像度の画像を使用すると、データ容量や処理時間が大きくなる場合があります。

そのため、必ずしも対象範囲のすべてを同じ品質で再構築する必要はありません。完成したデータをどのように利用するのかを踏まえ、必要な撮影範囲や品質をあらかじめ整理しておくことが重要です。

完成したデータをパソコンで確認するのか、クラウドで共有するのか、VRやARで利用するのかによっても、求められるデータ形式や軽量化の方法は変わります。

撮影を始める前に、記録対象と利用目的、閲覧する端末を決めておくことが、効率的なデータ作成につながります。

▼XGRIDSによる3DGS取得時のスキャニング映像(一乗谷朝倉氏遺跡:下城戸跡)

4.まとめ

本記事では、3DGSデータを作成する基本的な流れから、撮影機器の選び方、対象物をきれいに再構築するための撮影方法、生成時に起こりやすい問題までを解説しました。

3DGSは、スマートフォンやデジタルカメラなどで撮影した複数の画像を基に、現実の物体や空間を3次元的に再構築できます。

ただし、単に多くの写真を撮影すれば、必ず高品質なデータが完成するわけではありません。

重要なのは、隣り合う画像に十分な重なりを持たせ、対象物を複数の位置や高さから途切れなく撮影することです。撮影中の明るさやピントを安定させ、人や車などの動くものをできるだけ避けることも、生成品質の向上につながります。

生成結果に欠けやノイズが発生した場合は、処理設定だけで解決しようとせず、入力画像のぶれや撮影漏れ、画像同士のつながりを確認する必要があります。

また、ガラスや水面、模様の少ない壁面など、写真からの再構築が難しい対象もあります。3DGSは写実的な3次元空間の表現を得意としていますが、計測用の点群そのものを置き換える技術ではありません。

計測にはレーザースキャナなどで取得した点群、設計・施工情報の管理にはBIM/CIM、正式な記録には工事写真、現場の見た目を自由な視点から確認する用途には3DGSというように、それぞれの特性を理解して使い分けることが重要です。

 3DGSの作成は、生成処理だけでなく撮影段階の準備と工夫が結果を大きく左右します。まずは身近な物体や小規模な空間から試し、撮影方法と生成結果の関係を確認することが、実務活用へつなげる第一歩となるでしょう。

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