職業訓練校が土木エンジニアを育成!
「現場」のニーズに応えICT教育も推進
山形県立産業技術短期大学校は、山形県産業界の発展に寄与する人材育成を目的に設立された、全国初の県立産業能力開発短期大学校。最新機器と経験豊富な教員を揃え、産業界のニーズに応える実践的な技術教育により、ほぼ100%の就職率を実現しています。2017年4月、同校は新たに土木技術者養成を目指す「土木エンジニアリング科」を開設しました。そこで今回、オープンキャンパス開催中の同校を訪ね、新学科開設の背景と狙いについて先生方に伺いました。
山形県土木業界の次代を担う若者を育成
JR山形駅からクルマで約15分。市街地を抜けると緑豊かな田園風景が広がり、やがて山形県立産業技術短期大学校(通称「産技短」)のキャンパスが見えてきました。この日は、同校が実施するオープンキャンパス当日(7月23日)。あいにくの小雨模様ながら多くの高校生が詰めかけ、広大なキャンパスに若い歓声が飛び交っています。まずは学科ごとに学科説明や施設見学が行われ、高校生たちが緊張した面持ちで先生方の話に聞き入っています。早速、私たち取材班も土木エンジニアリング科の教室をお訪ねしました。
「ようこそいらっしゃいました。ちょうど当学科の説明を行っているところです。よろしければ聞いていってください」。そういって迎えて下さったのは、土木エンジニアリング科の大内先生と古谷先生です。やがて、教壇では、学科主任の鈴木教授による土木エンジニアリング科の紹介が始まりました。
「実は山形県には土木の技術知識が学べる大学や専門学校、短大、職業訓練校などがありません。そのため土木を学びたい高校生は県外に行くことが多く、卒業後はそのまま他県で就職してしまうケースも少なくありませんでした」。山形県の建設業界では若い担い手が急減しており、危機感を覚えた同業界の強い要望により、この4月に土木エンジニアリング科が開設されたのです。そしてこの春、高校を卒業したばかりの21名がこの新学科へ入学してきました。しかも、この第1期生は工業系だけでなく普通科卒の学生も多く、他県からの入学や2名の女子学生までいます。
このように、初年度から多彩な学生を集めた人気の背景には、同学科の実践的かつ先端的な技術が学べるカリキュラムと最新機器を網羅した設備があります。2年間のカリキュラムは高度職業訓練基準を満たす2800時間を確保しているのはもちろん、その半分を施工管理や測量、設計など実践的な経験を主体とする実習に充てているのも大きなポイントです。
県内で最も使われているCADを学ぶ
「机上の学習が主となる大学とは異なり、土木施工の現場で即戦力として活躍できる人材を、地元山形県の建設業界へ送り出すことが当科の目標。ですから土木の基礎知識の修得はもちろん、ICT建機や3次元CAD、ドローン等によるICT技術を実機で学ぶ授業も豊富に用意しています」(鈴木先生)。そして、施工管理者の仕事を進めて行く上での基盤として、あるいはその最終的な成果をまとめる上で核となるツールとして、先生方が最も重視している1つがCADの授業です。──鈴木先生による学科紹介がひと通り終った所で、取材班は教室を出て、大内先生の案内でPCルームへ向いました。
「校庭で建設機械の乗車体験やドローンでの写真測量デモも予定していましたが、今回は雨で中止となりました。代わりというわけではありませんが、PCルームで3次元CADの体験授業を行います。ぜひご覧ください」(大内先生)。自慢のPCルームには、3次元CADもスムーズに操作できるハイスペックなパソコンがズラリと並び、学生たちの来場を待っています。
「3次元CADはTREND-COREを選びました。他にEX-TREND武蔵やBLUETREND XAも使います。前述の通り、CADは学生たちに修得してほしい最重要なツールの一つ。だからこそ福井コンピュータ製品を採用しました」と大内先生は言葉を続けます。機能や使い勝手が大切なのは当然ですが、それ以上に重視したのは県内建設業界におけるシェアでした。「本校卒業生には県内の建設会社や測量コンサルタント会社で働いてほしいものですから、実際に県内で最も使われているCADを学ばせるべきでしょう」。そのため大内先生たちは、広く県内企業を対象にアンケートを取り、土木の現場や測量の現場で実際に使われているCADを調査。その結果をCAD選定に反映させたのです。福井コンピュータ製品の採用は、まさに山形の土木の現場を反映した選択だったといえます。
山形の3次元化の流れを牽引する存在に
「まず1年生の最初の集中講義でパソコン授業の基礎となるOffice製品をひと通り教え、次にEX-TREND武蔵のCADで作図を学んでもらいます。そして夏休み明けからは測量実習でBLUETREND XA。トータルステーションで測量データを取りXAで図面化させます」(大内先生)。順調に進めば、初年度後半にはTREND-COREで3次元CADを体験してもらえるだろう、と大内先生は語ります。かなり密度の高い授業が続きますが、現代の土木分野のプロフェッショナルを育てていく上で、これらはどうしても必要な内容なのだと言います。昨年まで工業高校で教員をしていた古谷先生もその言葉に頷きます。
「高校の場合は未だに手描き製図が主体で、CAD教育は3年か2年の途中から。それも2次元だけで終ってしまうのが通例です。本校では2次元から3次元までトータルに学び、ものづくりの一連の流れに触れられ、学生にも非常に分かりやすい内容となっています。そのぶん盛り沢山なので勉強は大変ですが、学生たちは頑張ってくれていますね」(古谷先生)。
やがて体験授業の時間となり、入学志望の高校生たちがPCルームへ集まってきました。まずは古谷先生が、土木の現場におけるICT技術の普及や3次元CADの活用について説明します。その後いよいよ高校生たちは、初めての3次元CAD──TREND-COREを立上げます。真剣な目で画面に見入りながら最初はおそるおそる……やがて目を輝かせながらマウスを滑らせ始めました。古谷先生は語ります。
「実は山形県の建設業界では、3次元化はまだまだこれからという状況です。ここにいる皆さんが当科で3次元CADを学び、卒業後は山形の企業に入って、各社の3次元化の流れを牽引してくれたら素晴らしいですね」。
力を合わせて建設業界を支えていきましょう
土木エンジニアリング科 教授 鈴木賢一氏
当科の学生には、まず土木業界でしっかりした人生設計を描いてもらうための「生きる術」を教えていきたいと考えています。それには、技術や知識はもちろん、人と人の関わり方を身に付けることも大切です。2年という短い期間ですが、ぜひそこまで学んでいただきたい。そして、卒業後も会社の枠を超えて繋がり続け、「ウチではこんな風にやってるよ」「ウチではこうだよ」と情報交換しながら、力を合わせて山形県の建設業界を支えていってほしいと考えています。
※2018年春公開のCONST-MAG Vol.6で掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。
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