社員を育てて着実に新技術とノウハウを蓄積
外注を使わずに一気通貫のICT工事を実現!
鹿児島県薩摩郡に本社を置く二渡建設は、従業員数30名弱の地域密着型建設会社です。クルマで40分圏内の地元をフィールドに、公共工事を主体とする多様な土木建設工事を手がけてきましたが、2017年、鹿児島県では初となる県発注のICT活用工事を受注。外注業者や専門コンサルタントの力を借りることなく、独力でのトータルなICT土工を成功させました。その狙いと背景について、同社社長の山下氏と同現場を担当した技術者の砂子田氏に伺います。
鹿児島初の県発注ICT工事を受注
- 御社の特徴は?
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山下氏
この規模の建設会社としては、直営工事のウェイトが大きいのが特徴でしょうか。外注の専門業者にばかり頼らず、社員を大事にしながら勉強させ資格を取らせて、できるだけ自分たちでカバーし合いながらやっていけるよう努力しています。今回、鹿児島県初となる県発注のICT活用工事を受注したのも、こうした当社の姿勢が背景にあります。
- というと、どんな狙いで受注を?
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山下氏
ICTについては以前から関心を持っていました……というより、国交省のエントリー書類等を作れば特記仕様書に書いてあるので、イヤでも気づきます。「3Dを使いこなさなければ次代の土俵に上がれなくなる」と。だから、今回はICT工事と聞いて積極的に取りにいったのです。初の県発注で競争相手は少ないし、ICT関連コストもいくらか考慮してもらえるかもしれない。ついでに新技術を勉強でき、他社に先駆けノウハウを身に付けらるならやらない手はない、と(笑)
- 具体的にはどのような工事ですか
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山下氏
名称は「道路改築工事(広瀬道路28-9工区)」で、1万8,000立米ほどの路体盛土工と構造物も少しありました。谷を100m×100mほど盛土して道路を造っていく途中までの工事です。この手の現場としては小規模で、練習がてらICTに挑戦するには手頃でした。
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砂子田氏
発注者からICTはひと通り全部試して欲しいと事前に言われており、それで「良い点・悪い点」が見えてきたら参考にしたいということだったんです。そこでドローンによる3次元起工測量からEX-TREND武蔵による3次元設計データ作成、バックホウやブルドーザなどICT建機を用いたマシンガイダンスにマシンコントロール、3D出来形管理、そして3Dデータ納品までトータルに行いました。
外注を使わずにICT工事をトータルに
- 外注を使わず全て自社でおやりだとか
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山下氏
同業者からは「コンサルを入れて教わりながらやるべきだ」と言われましたが、そうすると変更時や中間検査、自分がちょっと確認したいことでも、その度にコンサルにお金を払って来てもらう必要があります。それに自分たちでやらなければノウハウも身に付きませんよね。私は自ら学び身に付けて社内へ広めてほしいのです。それで「頑張ってみないか?」と担当の砂子田君に言いました。さすがに最初は彼も不安そうでしたが(笑)
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砂子田氏
その数カ月前にEX-TREND武蔵を導入して使っていたし、ドローンも3年程前から運用していましたが、ICT技術は全く未体験で分らないことだらけでしたから。そこで社長と2人でICT工事をやっている同業者を訪ねて、コツなどいろいろ教わったんです。その方たちにいただいた助言にはとても励まされました。
- どんな助言を?
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砂子田氏
最初、私はICTをすごく難しく考えてたんです。基準等も大量にあるし、さまざまなシステムや機器を使わなければならないし……ところがその方たちは「慣れれば簡単です」と言うんです。「最初は難しく感じますが、慣れてくれば丁張もかけないで済むし、どんどんできますよ」と。それで少し気が楽になり、やってみようと考えました。
- 実際にやってみてどうでしたか?
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砂子田氏
ドローンによる撮影時の高度など難しい計算方法も必要ですが、1回やってしまえば簡単でした。着工前の高度は何メートルで出来形は何メートルと決まっているので、そこを間違えないようにすれば問題ありません。3Dデータの作成も、建機等も含めて全てに反映されるので念入りにチェックして造る必要がありますが、できてしまえば後は機械のデータに変換していくだけ。どれも要点さえ押さえれば、思ったほど難しくないんです。武蔵やTREND-POINTの操作を含め、想像以上にスムーズに進められた実感があります。
公共も民間もICTを積極的に使っていく
- ICT自体の導入効果は?
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砂子田氏
ドローンによる起工測量は、通常6日程度かかる現場が実質3日で完了したし、横断測量中の手元作業員も必要ないので大きく省力化できました。また3次元設計データの作成には神経を使ったものの、完成した3Dでの発注者や工事関係者への説明は非常にスムーズで、切土・盛土量が正確に算出できるのも好評でした。またICT建機による施工は、前述の通り丁張やチェックの必要もない。工期短縮や省力化に繋げられますね。
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山下氏
やはり3Dで目で見て確認できるというのは大きいですね。以前なら丁張を見に行って上から見たり横から見たりして図面を確認したものですが、3Dデータなら間違っていれば一発で分る。間違えようがありません。……とにかくひと通り全部やって、砂子田君も自信を持ってくれたから、良い機会に良い勉強をできたと思います。後はこれを社内で広げていくことが重要です。当面は、砂子田君を中心に、公共・民間を問わずICTを使える現場でドンドン使っていきたいですね。
※2018年春公開のCONST-MAG Vol.6で掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。
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