河川内工事でCIMモデルをフル活用
安全管理と工事計画作りに大きな成果
松阪市に本社を置く松本組は、地域密着型の展開を標榜する地場ゼネコンです。三重県内をフィールドに官公庁発注の工事を幅広く行っています。そんな同社は、現場主義を基盤としながら、同時に早くからIT化を推進。すでにTREND-COREを導入し、現場での本格的なCIM運用も開始しています。今回は、そのCIM導入現場に羽根氏ら3人の技術者をお訪ねし、CIM導入の成果と今後の展開についてお話を伺いました。
面倒で手間がかかる、と当初は躊躇していたCIM導入
- こちらはどのような現場でしょうか
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羽根氏
国交省中部地方整備局発注の中ノ川高架橋下部左岸工事の現場です。工事延長が260m、橋台工3基にRC橋脚工が6基という工事内容ですが、このうち5基のRC橋脚工がCIMの試行対象となりました。工事は昨年10月に始まりこの7月末に完工。つい先日検査も受け、無事に完了しました。
- CIM導入の経緯をご紹介ください
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森本氏
まず現場の課題として、河川内で行う工事のため厳しい工期の制約がありました。具体的には半年の非出水期間に下部工を完成させ、河川内の仮設も全部撤去しなければならなかったんです。そのため施工ヤードの限られたスペースで、複数の作業を同時並行で行う必要がありました。
- そこでポイントとなったのは?
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森本氏
たとえば搬入路をどこに設けるか、また資材や機械の配置場所、指揮者の位置、毎日の作業範囲なども最適なパターンを考えて、日々の安全管理計画を確実に行わなければなりません。特に重機の配置や立入禁止範囲などは毎日変わるので、作業員に日々周知することも重要です。短期間でこれを徹底するのはなかなか難しいのです。
- そこでCIMの活用を?
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羽根氏
そうです。これらの課題を解決するには、より安全で無駄のない作業計画を早い段階で立て、それを現場にいる全員にわかりやすく伝える必要があります。そこでCIMが役に立つと思いました。CIMによる3Dの地形モデルを作って現場をリアルにイメージし、工事計画自体を可視化しようというわけです。この3Dモデルを幅広く活用することで、安全性の向上や施工効率の向上を図っていこうと考えました。
- 以前からCIMの研究を?
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羽根氏
実は3DやCIMには以前から興味がありました。ただ「難しい」とか「手間がかかる」という先入観があり、無理に導入したら、そちらにかまけて肝心の現場がおろそかになるんじゃないか、と。そんな不安を拭い去ってくれたのがTREND-COREでした。
- TREND-COREを知った経緯は?
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羽根氏
当社ではCADソフトとしてEX-TREND武蔵を導入しており、図面の半分はこれで作っています。測量線形の確認など武蔵は非常にスムーズで、設計照査等でもよく使いますよ。測量データ作成や出来形関係、特にTS出来形などはほぼすべて武蔵です。その関係で福井コンピュータにTREND-COREを紹介してもらいました。
- いつごろのことですか
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羽根氏
この現場の着工時期です。河川内作業の工程調整や増員、資材増設などの問題が浮上し、安全管理について議論していました。そこでTREND-COREを見て「これだ」と。スムーズにCIMに繋げられるとわかり導入を決めたんです。当社にとっても現場にとっても良いタイミングでしたね。
- TREND-CORE導入の決め手は?
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羽根氏
やはり、3Dに対する不安を一掃してくれた操作性が大きかったです。それこそExcelの図形を貼り付けていく感覚で3Dモデルを作れる。これなら、私たちの現場にも取り入れられると思ったんです。
- その印象は導入後も変わりませんか
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川口氏
実務での運用は私が担当したんですが、その通りだと思います。私もCIMのモデル作成は初めてだったし、最初はどれくらい時間がかかるか不安でした。でも始めてみると思ったより全然簡単にできるんです。用意されたパーツを置きたい所に置くことで、思い通りに形にできました。
- データ作成の流れをご紹介ください
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川口氏
DWGの発注データを下図としてTREND-COREに読み込み、作業画面に添付。これをなぞる感じで地形を作成します。座標を持たせて線形を作り、河川や堤防道路、法面などの形状を作ります。その上で橋脚構造物を作って、指示台や資機材等のパーツを置いて仕上げます。今回はほぼ私1人で作業しましたが、現場作業の合間を縫って半月ほどで形を仕上げられました。思ったよりずっと早くできましたね。
施工計画段階を中心に 積極的にCIMを取り入れていく
- 完成したモデルの活用はどのように?
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羽根氏
たとえば新しく来た作業員にこの現場の状況やルールを理解してもらう「新規入場者教育」。従来は平面図と口頭で行っていましたが、限られた時間内に正しく理解させるのは容易ではありません。
- 初めて入る現場ですからね
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羽根氏
ええ。そこで3D現場モデルを大画面のモニタに映して見せながら説明したんです。「ここが農道ですよ」とか「ここが工事用道路の入口です」とか……映像を見て一発で理解してもらえます。日々の作業計画伝達も同じで、皆に3Dモデルを見せながら「今日はここを重機が走る」とか「カラーコーンはここに置く」とか説明するんです。全員が施工イメージを共有するので、施工効率も安全性も大きく向上しました。
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森本氏
打合せの時もずいぶん活用しましたね。以前は現場で立ち話していましたが、今回は現場事務所の大型モニター前に皆が集まって打合せます。ここなら型枠、鉄筋、打設、足場等の4業者が1度に集まり、眼で見て確かめながら情報共有できるので行き違いがないんです。作業内容も注意事項もしっかり把握できますよ。
- 作業員さんの反響はいかがでしたか
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羽根氏
「初めての現場だったが、安全通路や立入禁止範囲がすぐわかった」という声を耳にしました。またクレーン運転手からは「クレーンの旋回制限がわかりやすく、打合せも時間短縮できた」という声を、交通誘導員からは「毎日変わる工事用道路も3Dの事前説明ですぐ把握できた」と聞きました。
- 発注者の評価はいかがでしたか
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羽根氏
非常に良かったです。従来は工程に追われて目が行き届かないこともありましたが、今回そういった指摘はぐっと減りました。最終的な評価も高く、CIMについて「本当にこういうわかりやすいのはいいね」という言葉をいただきました。
- 今後の取組はどのようにお考えですか
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羽根氏
施工計画段階でより積極的にCIMを取り入れていく計画です。主に準備段階で活用し、施工時にはそのモデルを事故防止などの安全対策に生かすやり方です。また、川口君はCIMを活用し「こちらからアピールする検査対応」を研究中です。受身でなく3Dでプレゼンする検査対応です。
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川口氏
昨日、その1発目のプレゼンをしてきたところです。まぁTREND-COREの機能をまだ使い切れていないのでもっと使い込まないと……。属性情報を関連付けたCIMモデルを作り、品質向上や出来形管理向上にも挑戦したいですね。
※2015年発行のCONST-MAGで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。
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