VR/AR

株式会社 斎藤組

VR/AR

図面では分かりにくい現場をVRで体感!
発注者向けVR現場体験会が大盛況に

埼玉県秩父市の株式会社斎藤組は、創業以来90年余に渡り地域の公共工事に携わり、秩父の基盤を築き上げてきた地域密着型ゼネコン。特に橋梁や治水、治山など難度の高い構造物を得意とし、高度な土木技術で多くの貢献を果たしています。その最新の取組みの一つが「TREND-CORE VR」による現場VRプレゼン。今回、同社は秩父県土整備事務所で「おもてなし街路整備工事」のVR体験説明会を実施。大きな好評を得ました。ここではその当日の模様をレポートします。

説明が難しい工事内容をVRで伝える

VR体験の順番を待つ職員の皆さま

2018年3月某日、私たち取材班は秩父市郊外の秩父県土整備事務所を訪ねました。この日は同事務所で「TREND-CORE VR体験説明会」が開催されるのです。

「実は当初、10時から開催予定でしたが、VR体験会と知って参加を希望される方が増え、急遽9時からのスタートに変更したのです」。そういって笑顔で迎えてくれたのは、今回の体験説明会の主催者、株式会社斎藤組の土木部部長を務める新井悠基氏です。早速、説明会の対象工事である「(総簡加)おもてなし街路整備工事」について伺います。

「秩父市で最もにぎやかなメイン通りである中央通線の道路整備工事で、具体的には電線の地中化や歩道の拡幅を行うものです。2区間だけ延長が長くなるなか、いかに周辺の病院や店舗、またその利用者の方々に影響なく工事を進められるかが大きな課題でした」。問題はこの道路の交通量の多さにあった、と新井氏は言います。通常は片側車線で工事する時はもう片側を交互通行にして進めるのが一般的ですが、この現場は交通量が多すぎ、大変な渋滞になってしまうのです。同工事を担当する土木部の島崎悠也氏は語ります。

「実際、1週間前にこの現場で他社の電気工事が行われたのですが、1時間程の規制でたちまち100m以上の渋滞ができていました。私たちの工事は道路をさらに大々的にいじるので、あれ以上の渋滞になりかねません。店舗や利用者に迷惑をかけないためどうすれば良いか、あらためて考えました」。そこで考案されたのが、道路両サイドに歩道を設け、片側施工中はもう片側サイドを全面開放し、そこを対面通行させようというアイデアでした。

「一度作ったものをいったん埋めて舗装してクルマを通せるようにしよう、という逆転の発想です。それを交互に繰り返すことで規制をかけずに済むのではないか、と」(島崎氏)。しかし、あまり前例のない工事手法のため、言葉や図面で説明しても発注者になかなか伝わりにくいのです。「そこで思いついたのが、福井コンピュータのTREND-CORE VRの活用です。TREND-COREで作成した現場状況全体の3DモデルをVR化し、発注者の方たちをお招きして「3Dモデル現場の中」へ入ってもらい、この工事と現場状況を体感してもらおう、と考えたのです。──後はもう実際に会場をご覧いただいた方が良いでしょう。会場の方へどうぞ!」(島崎氏)。

自在に動きながら現場を体感

VR体験会の模様

大会議室に設えられた会場は、3分の1ほどがVR体験コーナーに充てられ、今しもVR体験しようという県土整備事務所の職員の方が、サポートスタッフにヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を装着してもらっています。
 「いかがですか、苦しくありませんか?」
 「大丈夫です。これはもうVRの世界なんですよね。思っていた以上にリアルですね……」
 「ええ、その通りです。いまご覧なのは、今回の工事現場のVR世界です。どうぞその場で周りをご覧ください」。スタッフの声に応えて被験者はゆっくり左右を見回します。
 「これは中央通の交差点ですね。コンビニや病院に見覚えがあります」。「よくお分かりですね、その通りです」。被験者が見ているのは装着したHMDに映し出されるVR空間ですが、隅に大型スクリーンが置かれ、被験者の視界と同じVR映像が映写されています。順番を待つ職員の方々がスクリーン映像と体験中の同僚を興味津々で見つめています。一方、被験者はHMDを装着したまま左右を見回し小さく驚きの声を上げ続けています。

TREND-CORE VRによるVR現場

「では、これから移動手段をお渡しします」。スタッフが声をかけ、左右の手に1本ずつコントローラを握らせます。スクリーンを見ると、左手コントローラから釣り竿のような青い輝線が画面奥に向って伸びています。「その竿の先端部を行きたい場所へ当て、コントローラのトリガーを引いてください」。スタッフの指示に従い被験者がトリガーを引くと一瞬で目標の場所へ移動し、また小さく驚きの声が上がります。「行きたい方向へ竿を伸ばしトリガーを引く──この繰返しで自由に移動できるんです」。その声に応えて、被験者は方向を変えながらどんどん引き金を引き、VR世界の中を突き進みます。「あ、そこで停まって、しゃがんでみてください」。

スタッフの声に応えてHMDを付けた被験者が腰を落とすと、スクリーンの視点も地面近く降りていきます。「ここに段差がありますね」被験者が言うとスタッフが答えます。「ええ、ちょうど子どもの目の高さで安全性が確認いただけます。次は正面のクレーン車へ右手のコントローラを向けてみましょう」。するとスクリーンではその右手からピンク色の輝線が走りVR世界のクレーン車まで伸びます。「そこでトリガーを引いてみてください」。被験者がそうすると順番待ちの職員の方々から驚きの声が上がります。VR空間のクレーンが空高くクレーンを伸ばし始めたのです。

「ここでクレーンを伸ばすと電線に交差してしまいますね。縮めましょう」。被験者が操作するとクレーンは短く畳み込まれます。興に乗った被験者が別の場所へ輝線を当ててトリガーを引くと、今度はクレーンが旋回して迫ってきます。「おおッ」と首をすくめる被験者。「回転半径内だったか!本当だったら大ケガだね」と苦笑いすると、同僚の方々からも大きな笑い声が上がりました。

想像以上にリアルで可能性豊かなVR体験

VR体験会の模様

このように多くの重機を動かしたり、バードアイ視点で高所から見下ろし現場全体の配置を確認するなど、VRの多様な機能を試しながら約5分のVRの現場体験を済ませ、被験者は満足そうにHMDを外しました。「想像していた以上にリアルで驚いた。これはいろいろ活用できそうだ」。順番待ちの職員の方々から声がかかり、待ちかねたように次の被験者が立ち上がります。
「VRに対する関心の高さは想像以上です。他事務所から来られる方までいて、総計30人になりました」(島崎氏)。一方、今回のVR用現場モデルを制作した土木部の源田貴久氏は語ります。
「TREND-CORE自体が使いやすいので、モデル入力は苦労しませんでした。VRをお客様向けに使うのは初めてですが、TREND-COREで作るモデルは、他の体験会や作業員向け安全教育などいろいろ活用しています」。

最後に、今回実際にVR現場を体験された職員の方の感想から幾つか声を拾ってみました。

  • 現場の施工管理や安全管理など、これまで現場が始まらないと確認できなかったことが、事前に目で見て確認できるのは凄く大きい。
  • 安全施設の配置やクレーンの旋回範囲の干渉物など、現実のように体験して検討できるので、より現状に合った施工計画ができそう。
  • 着工前の地元説明会でVR体験してもらえば、住民の方々にも工事をイメージしてもらいやすいはず。工事中も良好な関係が築けそうだ。
  • 発注者と受注者間でVRによる施工計画チェックを行えば、歩行者や施工している人双方の安全等リアルに確認できる。早く実務に取り入れられる未来が来てほしい。

※役職などは2018年春、取材当時のものです。

本例での導入製品(製品ページ)はこちら

お気軽にご相談ください

自社に合う製品が分からない、導入についての詳細が知りたいなど、専任のスタッフが疑問にお応えいたします。まずはお気軽にお問合せください。

新井 悠基土木部 部長

源田 貴久土木部 係長

島崎 悠也土木部 係長

株式会社 斎藤組

設立
1928年4月
代表者
代表取締役 齊藤公志郎
本社
埼玉県秩父市
資本金
5,000万円
従業員数
35名
事業内容
建築工事、道路工事、河川工事、土地造成工事、上下水道工事、トンネル工事、砂防工事、公園工事、橋梁工事、採掘業、セメント販売業ほか

新着事例