土木、建築の分野の枠を超えて若い力を結集
全社へCIM・ICT技術を普及させていく
さまざまな現場に合わせCIM・ICT技術を提案&提供
i-Conで求められる内容を超えた幅広い活用へ
岐阜市の市川工務店は、土木・建築の両分野に展開する岐阜県・東海地方を活動拠点とした総合建設会社です。特に土木工事分野では創業以来の実績を持ち、道路工事を中心に橋梁下部工やトンネル工、舗装工等に豊富なノウハウを蓄積しています。そんな同社だけにCIMやICTの導入・活用にもいち早く取組み、この分野においても地域をリードし続けています。ここでは、そんな同社のCIM・ICT活用を牽引&サポートしているCIM委員会の皆さんにお話を伺います。
部門の枠を超えデジタルに強い若手を結集
- ICTへの取組みが始まったのは?
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鈴村氏
最初の活用は2013年、長良川の穂積護岸工事現場でした。護岸に据付ける膨大なブロック材料のトレーサビリティを確保しようという狙いで、CIMの技術を活用しました。これは発注者の要求ではなく、当社からの提案で実施した取組みです。どこよりも早く3Dの活用を進めたいという、トップの意向が強く反映されたものですね。また、ちょうどTREND-COREを導入したばかりだったので、現場でこれをどんな風に活用できるのか試そうという狙いもあり、実際にこの後、多くの現場でさまざまな使い方を試行しました。
- CIMの具体的な取組み内容は?
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淺野氏
まずTREND-COREを用いて現場の3Dモデルを作成しました。TREND-CORE機能を利用し、個々にその材料がいつ製作され、いつ納入されて、施工日はいつになるのか、といった情報を持たせてトレーサビリティを確保し、材料の管理等に活用していったんです。TREND-COREの操作は私が行いましたが、もちろんそれが初めて。当時はまだ土木の知識も浅かったので、最初は図面から3Dモデルを立ち上げることにも苦労しました(笑)
- 2番目のICT活用現場は?
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鈴村氏
2015年の長良川左岸の今嶺河道掘削工事現場で試行した、UAVによる空撮3次元測量です。実は当初UAVがどういうものかよく分かってなかったので、とにかくやってみたんです。撮影した写真データから3Dモデルデータを作り、土量の計測や出来形計測の精度を検証しました。当時はまだ社内にパイロットがいなかったのでUAVの操縦は専門家に外注し、TREND-COREによる3Dモデル製作や計算作業のみ社内で行いました。他にも幾つか同様な取組みを経て、CIMやICTが実際に現場で使えるという手応えを感じて、私たちの挑戦も新しい段階に向かっていきました。
- ICT挑戦の新しい段階とは?
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鈴村氏
2015年にCIMやICTの活用を推進し現場での活用を支援する、CIM委員会という組織を社内に設置しました。これは、CIMや情報化施工等の新しい動きが活発化していくなか、この流れを先取りする形でいち早く先端的な技術を社内へ導入、普及させていこうという狙いで作った部門横断的な組織です。そのため、土木や建築、現場といった部門の枠を超えて、デジタルに強そうな若いメンバーを結集しました。現在は総勢11名ほどで構成され、今日ここに集まったのは、その主要メンバーです。
- 具体的にはどのような活動を?
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鈴村氏
CIMやICTに関わる情報収集からその導入、活用の支援が主務となります。社内のイントラや技術発表会等を活用してさまざまな発表や具体的な活用提案を行っていくほか、一種の社内営業的なアプローチで新しい現場にICTやCIMを「やってみないか?」と活用提案していきます。もちろん各現場の工事責任者から相談を受けて、その現場に合った新しい技術情報を提案することも多いですね。そして、現場への導入が決まると、今度は3Dモデルの製作や計算、あるいはUAVの飛行等、各種のCIM・ICT実務を支援していくわけです。
i-Constructionを超えた活用法の広がり
- CIM委員会メンバーはCIMやICTのエキスパート?
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鈴村氏
それぞれ得意分野があるので、現場の支援業務は分担しています。私が委員長を、早川君が副委員長を務めるほか、淺野君や堀君たちはTREND-COREやTREND-POINTなどツール類の操作を担当し、3Dモデル作成やシミュレーション、各種のデータ処理等を行います。また、加藤君はUAVのパイロットです。部署がばらばらなので全員が集まるのは難しく、集まれるのは月一回ていど。通常はメールや電話で打合せて作業を進めます。
- 委員会設立でCIM活用の幅が広まりましたか?
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鈴村氏
前述の通り、TREND-COREもTREND-POINTも「どんなことに使えるのか」「どんな効果があるのか」試すつもりでさまざまな使い方をしてきました。高速道路OFFランプの下部工事で3次元の配筋モデルを作って配筋の干渉チェックをしたり、トンネル工事で地層の中を「見える化」したり……2年前の下水管渠布設工事の現場で安全管理のため、3Dモデルで「見え方」をシミュレーションしたこともあります。
- TREND-POINTについては?
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鈴村氏
UAVとTREND-POINTは現在フル稼働状態ですね。地形・土量・環境等に関する測量補助業務に工事出来高写真、工事の完成写真撮影等のほか、i-Con現場についても10数件やりました。当初はi-Con現場でのICT業務は外注していましたが、そうすると結局、フルに活用するのは起工測量と最後の所だけ、ということになりがちです。しかし、私たちとしては書類さえ整えれば良いというわけではないんですよね。出来形管理など、その間の施工管理にこそ3Dデータを活用したいと思っているのですから……。そのためか、最近はi-Con現場も徐々に自社施工が増えており、よりICT技術のより幅広い活用が広がりつつある実感があります。
- UAVについては?
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加藤氏
私はまだパイロットとしては写真撮影が中心ですが、それでも最近は新しいジャンルの依頼を受けることが増えました。先日もPR動画を作りたいというご依頼で、お客様の本社ビルを撮影してきました。新しいビジネスにも繋がりそうです。
非常に大きい効率化効果
- CIM、ICTの効果を感じていますか?
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鈴村氏
やはり3Dならではの分かりやすさ、伝わりやすさが1番大きいと感じます。発注者にも作業員にも、地元の方にも、2Dの図面だけでは到底伝えきれなかった情報が、いまや非常に伝えやすくなりました。皆さん素直に関してくださることが多く、特に発注者さんには喜んでいただいてます。
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堀氏
効率化の効果も非常に大きいですね。たとえば3Dから断面図を切りだして発注図面との相違を確認する時など、すごくスムーズで……切りたい所で断面が切れるし、図面と重ね合わせるだけで分るのです。また、測量の効率化も非常に大きくて。人員も手間も半分以下になっています。特に延長が長い現場ほど時間短縮になっていますね。
- 委員会としての今後の計画は?
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鈴村氏
CIMやICTの普及は引き続き注力していきますが、合わせてさらに新しい技術にも挑戦していきたいですね。VR技術を活かしたものやARやMRなども非常に興味があります。
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早川氏
Holo Lensを用いて、現実の風景に重ね合わせて完成時の建物や構造物が見られたら面白いですよね。
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鈴村氏
土木だけでなく建築の方でも、いろいろ活用できると思うので、少しずつでも試していきたいです。
※役職などは2019年春、取材当時のものです。
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