「ICTにできること」を現場で確かめながら
じっくりと着実に全社へ普及を進めていく
ICT施工で「何が」「どこまで」できるのか?
試行錯誤の積み重ねから見えてきたもの
長野県中野市の中野土建は、創立以来70年余の歴史を持ち、建築・土木を2本柱とする地域密着型の建設会社です。特に土木部門は道路一般工事から砂防工事等の河川護岸、橋梁架設等々、この地域のインフラ整備を担い、大きな実績を積み重ねてきました。そんな同社土木部門は2016年に福井コンピュータ製品を一挙に導入し、ICTの普及&活用を開始しました。そのICT活用戦略について、土木部の荻原部長ら3氏に伺います。
ICTで何がどこまでできるのか?
- 「品質」重視が一番のこだわりと聞きましたが?
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荻原氏
当社は「良い仕事」を誠実に完成して地域に貢献することを経営方針としており、特に施工品質を重視しています。1999年にはいち早くISO9001の認証を取得し、国や県から優良表彰をいただいた現場も少なくありません。工事自体は何でも対応しますが、得意としている工事は道路舗装で、これは機械も一式全部所有して管理から施工までトータルに行っています。ただ、近年は国の方針もあり道路関係の工事は維持修理が中心となっており、私たちが任される現場も砂防関係の工事が多くなっていますね。
- 現在の経営課題は何でしょうか
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荻原氏
当社に限らず建設関係に共通する課題として、若い人材不足が上げられます。幸い当社では近年、20代の社員を積極的に採用してきたこともあって平均年齢はかなり若返りました。しかし、その上の30代の社員が一人もおらず、世代毎の人数に格差が生じています。結果、入社してくれた若い社員たちを育てる先輩となるべき30代の中堅社員がおらず、また若手を育てるための育成ノウハウ自体も不足気味です。そのため現在は若手育成が、私たちにとって大きな課題といえるでしょう。……実は、ICT技術をこの若手教育に活かそうという狙いもあるんですよ。
- ICTの取組みはいつどんな形で始まりましたか?
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荻原氏
2016年に国土交通省が宣言したi-Constructionの開始を受けて、私たちも取組みを開始しました。国交省の仕事も請負っているので、流れに乗り遅れるわけには行きません。すぐにEX-TREND武蔵を入れ、続いてTREND-CORE、TREND-POINTを導入してICT施工への対応を進めていきました。それまで当社ではずっと他社製2次元CADと施工管理システムを使っていましたが、いよいよ現場の3次元化が始まれば、福井コンピュータ製品以外に選択肢はないと思ったからです。もちろん一気に全てのCADを切り替えるのは困難ですから、流れが本格化する前にICTをいろいろ試し、ノウハウを蓄積しながら普及していこうと考えています。
- 最初にICT活用に取り組んだ現場は?
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徳竹氏
福井コンピュータ製品を導入した年に、わりとすぐ2つの現場でほぼ並行して試用を開始しました。一つは長野県発注の「平成28年度 防災・安全交付金(火山砂防)工事」という砂防堰堤工事で、ICT機器・ソフト類のお試しを兼ねて補助的に使用してみました。とにかくICTで一体どこまでのことができるのか、早目に実感しておきたいという思いがあり、「試しにちょっと使ってみようよ」という気持ちで取組んだのです。
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荻原氏
もう一つは、国交省の発注となる「古間道路改良舗装工事」ですね。こちらは国道18号線野尻バイパスの道路線形を改良するという工事でしたが、約3万㎥の残土処理の作業があったことから、ICT施工を試そうということになりました。そこで、公告段階でウチの方から手を上げて「この現場でICT施工をやります」と発注者へ提案し、ICT施工のひと通りのメニューを実施していきました。
初めてのICT現場で試行錯誤
- 火山砂防工事の現場をご紹介ください
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山本氏
土石流や溶岩流、火山泥流等に対する砂防堰堤を作る工事で、工期は2016年9月から2017年11月まで。ICTのおかげかどうか分りませんが、「優良技術者表彰」もいただきました。実際にはまず起工測量で、立木伐採後にドローンを飛ばして現地盤の状況を撮影し、これをTREND-POINTで点群データ化しTREND-COREで現地盤3Dモデルを作成。同じくTREND-COREで作った砂防堰堤の3Dモデルを配置して、計画配置の完成予想図を作り、これをさまざまに活用していきました。
- ドローンは外注ですか
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徳竹氏
練習がてら私が飛ばしました。最初はやり方が分らず何度も失敗しましたが、いろいろ試すうちコツもつかめました。実際に使う前は「3Dレーザースキャナーに比べ、ドローンは角が出ない」と聞いていましたが、実際にやってみたら「ちゃんと出る!」って(笑)。もちろん条件により精度等も変わってしまいますが、とにかく実用に問題ないことを確認できました。
- 砂防堰堤の3Dモデルを作った狙いは?
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山本氏
この砂防堰堤は左岸袖部が上流側に45度折れる形状で、発注図面ではこの形を想像し難く、当初、型枠加工や出来形不足が懸念されました。そこで誰でもイメージしやすい3Dモデルを作ろう、ということになったんです。完成したモデルは、前述の通り現況モデルにはめ込んで完成予想図を作成し、さらにその展開図を出力し貼り合せて1/100の建築模型まで作りました。そして、仮設備計画や機器の配置計画、盛土高や土量算出に活用したのです。作業は概ねスムーズに進みましたが、不定形な形状をTREND-COREで作るのはちょっと難しかったですね。
- ICTの導入効果を感じられましたか
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山本氏
各種の工事計画の検討や情報共有に役立ったし、現場の作業員にも計画や作業手順がとても伝えやすく、施工自体の効率化や安全向上に寄与できたと思います。まあ、この現場のICTはあくまで補助的な利用で、本格的な活用メリットの創出はこれからですね。
手間がかかっても自分たちの手で
- 「古間道路改良舗装工事」はいかがでしたか
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荻原氏
前述の通り国道18号線野尻バイパスの整備工事の一環で、約1.5キロ程度の国道の道路線形を修正する工事です。道路脇に除雪帯を作る必要があり、スペース確保のため3万㎥ほどの土の山を削りました。その土量が多いのでICTをやろう、という話になったのです。i-Conメニューとしては、まず3Dレーザースキャナーで起工測量を行い、その点群データからTREND-POINTとTREND-COREを用いて土量計算し、もちろん3次元設計データも作成。そして、バックホウのマシンガイダンスにより施工を行いました。現場代理人は25歳(当時)の若手職員に任せたのですが、とても頑張ってくれました。
- 今後の取組みは?
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徳竹氏
フルにICT施工できる現場はまだそれほどありませんが、ドローンを飛ばして行うICTの起工測量はどの現場でも行うようにしています。とにかく外注は使わずに、多少手間がかかっても自分たちでできるように普及させていきたいですね。実は今度、私もドローンの訓練校に行かせてもらえることになったので、本格的に勉強してくるつもりです。
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山本氏
私は3Dデータの活用法ということを、もっと追求していきたいですね。丁張をかけずにMC/MGで現場をやること、これを今年の目標としています。これができれば一番の省力化になりますからね。
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荻原氏
実は今年から、ある女性スタッフにTREND-COREの操作を任せ、3Dモデル制作をやってもらっています。新しい現場をどんどん3Dモデル化してもらい、現場の負担を軽減しながらICTの普及を図っていこうというわけです。まだ始まったばかりの取組みですが、着実に進めていきますよ。
※役職などは2019年春、取材当時のものです。
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