i-Construction

佐々木建設株式会社

i-Construction

初めての福井コンピュータ製品で
県初のICTモデル工事にチャレンジ!

「従来方式+ICT施工」など独自の実用的ICT施工手法も開発

i-Constructionの普及を進める国土交通省では、ICT活用の裾野を中小建設業へ拡げていくため、各地で現場支援型モデル事業を実施しています。なかでも茨城県は、これを前倒しする形で、いち早く2016年度から取組みを推進。同県つくば市内の宅地造成工事2件を、この現場支援型ICTモデル工事として県内企業に発注しました。その1社が茨城県土浦市の佐々木建設株式会社です。ここでは、ICTモデル工事の現場を担当した柳瀬修之氏に、取組みの詳細について伺います。

ICT技術をいち早く導入

ICT建機による施工

御社についてご紹介ください

柳瀬

1967年に創業以来、この茨城県で半世紀余の歴史を持つ地域密着型のゼネコンです。主力の土木工事分野で中心としているのは県発注の公共工事で、他に国交省発注工事なども行っています。民間工事は建築分野以外ではほとんどやっていません。

i-Constructionへの取組みは?

柳瀬

茨城県の土木業界の取組みは遅れ気味なので、当社は地域の業界をリードしていこうという思いで準備を進めてきました。TS出来形は7~8年前から取り組み始め、順次機器システムを導入し、2017年にi-Constructionが始まるとすぐ国交省発注工事を受注してICT技術をひと通り試しました。

国交省発注工事はどんな内容でしたか?

柳瀬

2015年の関東・東北豪雨災害により茨城県も大きな被害を受け、鬼怒川も氾濫して堤防が決壊するなどしました。当社が行ったのはその復旧工事で「大房災害復旧工事」の現場です。場所は鬼怒川の氾濫個所の少し上流。ここを段切りして腹付けする盛土工事を行いました。用いたICT技術は、レーザースキャナーとドローンによる計測、3Dモデルデータを作成してMGバックホウにMCブルドーザにTS出来形、そしてGNSSを用いた転圧管理まで、いちおうひと通り全て行いました。

初めてのICT技術活用はいかがでしたか

柳瀬

私はもともと現場での3D活用に強い関心があり、i-Conの流れにも注目していたんです。国交省工事の時は、実は私は担当ではなかったんですが、「ぜひやらせてほしい!」と希望を出して参加させてもらいました。現場は私だけでなく発注者も初めての挑戦だったため、誰もが手探りで進めて行くような状態でしたが、ドローンによる計測は楽だし丁張りはいらないし……短い距離の盛土工事なら非常に効果的だと感じました。そして、そんな成果を受けて取組んだのが、今回のモデル工事ということになります。

独自の「従来方式+ICT施工」にチャレンジ

TREND-POINTによるヒートマップ作成

実際のICT活用についてはいかがでしたか

柳瀬

まず3次元測量についてですが、今回はドローンと3Dレーザースキャナーを併用しました。起工測量については、施工総研の方にドローンを飛ばしてもらったんですが、これは私にとって国交省の現場に続く2度目の3D写真測量ということになりますし、普通に進めることができました。ただ、施工エリアが非常に広かったため、完成後の出来形計測時はドローンで取った画像の点数があまりにも多くなってしまい、結果的に処理しきれずレーザースキャナーで補完する必要があったんです。

次の3D設計データは一人で?

柳瀬

ええ、私一人で EX-TREND武蔵を使って作っていきました。4月半ば過ぎから手を付けて、「今日はこの区画、明日はあちらの区画」という風に日々少しずつ更新していくようにして作り進めていき、最終的に全部を合体させて仕上げる、というやり方で作成しました。実は佐々木建設では他社製品を使っていたのですが、今回は施工総研の勧めもあり、福井コンピュータ製品を全面的に使うことにしました。おかげで最初はぜんぜん操作が分らなくて……福井コンピュータのサポートにはずいぶん助けてもらいましたし、操作講習会等にも行きましたね。

ぶっつけ本番で使い始めたんですね

柳瀬

そういうことになりますね。でも、実は私自身も武蔵を使ってみたかったんですよ。むかし別の福井コンピュータ製品を使った経験があったので「使えるかな」と思ったんです。実際、当初は苦労しましたが、そうやって一人で一物件をきっちりやりきることで操作は確実に身に付き、効率も大きく向上できたと思います。実際、初期に作った設計モデルデータは見られたものじゃありませんが、最後の方のデータは、我ながらかなりきっちりできている自信があります(笑)。

次はICT施工ですね?

柳瀬

ええ、通常どおりMC/MGを駆使して行っていきましたが、D街区は施工エリアが広く、宅盤数も多いので、特に丁張設置時間の削減効果を強く実感しました。オペレーターもいちいち重機を降りなくて良いし、楽にできるということで好評でした。また、モデル工事ならではの工夫と言うか、初めての試みとして、バックホウによる法面整形を従来方式とICT施工を組合せた独自の施工法で行ってみたんです。これに従来方式(通常建機&丁張り)やICT施工(ICT建機のみ)と合計3通りの施工法を実施して比較してみました。

TREND-FIELDを利用して現地確認

従来方式+ICT施工の施工法とは?

柳瀬

法面の整形を2段階で行うのです。まず3DのMCバックホウを先行させてずーっと宅盤を切っていって、その後をちょっと間を空けて従来式の2Dバックホウで切っていく。つまり、最初にざっくり全体を3Dバックホウでやってから、あとの細かい整形を従来式の2Dバックホウで行っていく3D/2D併用スタイルですね。後の2Dバックホウの方はやはり熟練者のオペレーターが必要になりますが、最初の3DバックホウはICT施工なので経験の浅いオペレーターでも問題なくやれます。このやり方なら、精度さえ出せればコストのかかる3Dバックホウのレンタル期間を短縮できるので、コストを抑えられるわけで……。そうすれば、ICTの実用性がいっそう高められるんじゃないかと考えて、施工総研の方とも相談して試してみたわけです。

3方式を比較した結果はどうでしたか?

柳瀬

設計値との誤差は最大でも10cm以内に収まっていましたし、「これならいける!」と感じました。場所にもよりますが、多くの現場で使えるんじゃないでしょうか。せっかくですから、施工総研に出してもらった細かい数値をお伝えしておきましょう。TS計測値と設計値の誤差が5cmを超えたのはICT施工では1カ所だけで、従来+ICT施工は20カ所。延長約20m×法長約15.4m(約30.8㎡)での作業時間を比べると、従来施工の172分に対してICT施工は89分、従来+ICT施工でも86分と大幅に短縮できることが分かりました。しかも、従来+ICT施工ならコスト削減も図れるというわけです。

従来+ICT施工には特別な注意点などありますか?

柳瀬

そうですね。3Dバックホウでやった後の2Dバックホウでの作業も、前述の通り熟練したオペレーターなら3Dで切った見本があればその通りできます。しかし、いったん切ってしまうと実際にどこが3Dで切った場所か分からなくなってしまいがちなので、何らかの印が必要でした。そこで3Dで切った後の法面に棒などを指しておくようにしました。「棒の前後2mはI C T 建機で切った」というマーキングにしたわけです。そうしないと、熟練のオペレーターでもどこが3Dか2Dか分からず、迷子になりかねませんから。

次は出来形測量ですね

柳瀬

正直いってここが最大のピンチでした。前述の通り、ドローンを飛ばして撮った撮影点数が膨大な量になってしまったうえ、天候の問題も加わって、スケジュール的にどんどん厳しさが増していったため、さまざまな対応が追いつかなくなってしまったんです。最後はスケジュールの上でも本当に厳しい状態になっていたので、外注業者さんにもいっそうの協力を依頼するなどして……とにかく一刻も早く作業が進むよう、毎日のように祈っていましたね。結局、必要なものができあがってきたのは直前となり、そこから設計データと重ねて仕上げていくことができました。かなりギリギリの作業でしたが、最終的には問題なくクリアできたのでなんとか助かりました(笑)。

想像以上に何にでも応用できるICT技術

発注者を対象に現場見学会を実施

モデル工事を終えた感想をどうぞ

柳瀬

多くの方の協力により、通常なかなか経験できないことを経験させてもらい、すごく楽しかったです。最後にちょっと冷や冷やしましたが、武蔵で3D設計データを作っている時など、もう楽しくて楽しくて……。特に自分が作った3D設計データが、出来形の3Dデータとぴったり重なって「ピッ!」と来るのがすごく快感でしたね。前述の「従来+ICT施工」もそうですが、茨城ではまだ誰もやってないような先端的な技術を自分の手で試せる、というのは本当に最高の気分です。また、効果という点で印象的だったのは、やはり「丁張りをしない」で済む点ですね。もし、これだけの面積に実際に丁張りをかけていったら、全体でたぶん1ヶ月はかかったでしょう。それがデータにしてしまえば3~4日、遅くとも1週間で完了する。この違いは圧倒的です。

オペレーターは何と言ってましたか?

柳瀬

オペレーターは前回の国交省現場から今回のモデル工事現場まで、なかば私の専属みたいな形で、同じオペさんにやってもらったんですが、それで彼もすっかりICT施工に慣れてしまったようで……。今は従来通りの現場で2Dの建機で法を切っているのですが、やはり2Dは「切りづらい」といっていますね。「丁張りをやると邪魔だし、向が見えないし、いちいち降りなきゃいけないし、高さも分らないし」ということで、ICT現場の方が良いようです(笑)。

ご自身にとっての成果は?

柳瀬

従来+ICT施工など、いろいろな技術やノウハウを蓄積できましたね。また、ICT施工の技術は思っていた以上に何にでも応用が効く、と実感できたのも大きかったです。例の「従来+ICT施工」のやり方も、たとえば掘削などにたぶんそのまま生かせますよ。段切りだって何カ所か3Dで切っておけば、そのまま2Dでやれるでしょうし……。とにかく、もう少し機械のコストが抑えられれば、どんどん普及していくんじゃないかと思います。

モデル工事だけに見学会等も多かったかと思いますが?

柳瀬

ええ、大きな見学会だけで3回、その他にも効果検証会などを開催したので、それらへの対応もなかなか大変でした。茨城県の方はもちろん、同業者や国交省、施工総研の方もたくさんお見えになりました。皆さん熱心に観てくださいましたが、特に注目を集めたのは、やはり「従来+ICT施工」方式と私が現場に持ち込んで使っていたTREND-FIELDですね。

福井コンピュータ製品を使いこなしておられますね

柳瀬

TREND-FIELDが届いた時すごく嬉しくて、ずっと現場に持ち出して使っていたんです。普通のパソコンと同じように、というかそれ以上に臨機応変に現場に合わせて使いまくっていました。高さデータや各種の基準類等も入れておき、ちょっと複雑な地形の所など3Dをキャプチャーしてオペレーターに見せてやれば、すぐに理解してもらえる。紙の図面ではこうはいきません。その他の福井コンピュータ製品としては、EX-TREND武蔵とTREND-POINTを非常によく使いました。武蔵はもちろん、TREND-POINTも機能はずば抜けていると思います。できればTREND-COREも使ってみたかったんですが、残念ながら今回はそこまで手が回りませんでした。

新しい現場で新しいICT施工を

もう次の現場はお決まりですか?

柳瀬

はい。ただし、そこは普通の2D現場なんですよ。まぁ、なかなか思うようには行きませんが、チャンスさえもらえれば私もまた、ICT現場を担当したいと考えています。

もしICT現場をやるとしたら挑戦してみたいのは?

柳瀬

もしやらせてもらえるなら、今回の経験を応用する形で 武蔵 や TREND-POINTを駆使して構造物をやってみたいですね。たとえばU字溝や下水溝など一式ぜんぶ作ってみたいし、ICT舗装工も始まっているようなので、これにもぜひ挑戦してみたいと思っています。もし可能なら、最初に現況だけでも3Dデータでもらうことができたらいいですね。そうすれば、それに合わせて切ることができるので、もっとスピードアップできるんじゃないかと思うんですよ。今回の現場では2Dデータをもらってそこから3Dモデルにしていったので、手間もかかってしまうし、高さなど誤差が生まれかねません。もっとも、これは業界全体の3D化がもっともっと進んでいかないと、なかなか難しいでしょう。

ご自身の目標は?

柳瀬

やはり、新しいICT活用現場を担当してもっといろいろ応用し試していくことですね。国交省発注工事か、あるいは県からもICT活用工事は何件か発注されているようですから、受注してもらえれば積極的に手を上げて参加していくつもりです。そして、もう一つは社内への水平展開です。みんな忙しいのでなかなか難しいのですが、せっかく蓄積したICTの技術やノウハウですから、できるだけ社内に広げて共有していければいいなと考えています。

※役職などは2018年春、取材当時のものです。

本例での導入製品(製品ページ)はこちら

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柳瀬 修之工事部

佐々木建設株式会社

創立
1967年1月
代表者
会   長 佐々木 勇
代表取締役 小池 文男
所 在 地
茨城県土浦市
資本金
4億1,000万円
事業内容
総合建設業

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