i-Constructionに関係なく全現場で3次元測量!
現場の要望に応えて広げる「普段使い」のICT
TREND-POINTにより作業効率は大きく向上
2~3日かかった作業が、今では半日かからず完了
奈良県桜井市の井前建設は、土木・建築工事全般から測量、地質調査まで幅広く展開する技術者集団。土木関連だけでも一般土木から道路舗装や法面保護、さく井工事等に至るまでオールマイティに取組んでいます。新しい技術の吸収にも力を注いでおり、i-Construction以前からICT技術を積極的に導入。現在では全ての現場で3次元測量を行って、3Dデータを幅広く活用しています。文字通り「ICTの普段使い」を実践する同社の山下氏と平田氏に伺います。
i-Construction前からICTを普段使い
- ICTの取組みはいつごろから?
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山下氏
2014年にTOPCONのIS-305を入れたのがきっかけです。それまでは、たとえば土量の変化が知りたければいちいち現場にトータルステーションを据えて測り直していましたが、IS-305のスキャナー機能を使えば簡単に分かります。これは発注者にもアピールできる!と考え、即導入したのです。合わせてメッシュ土量計算ができるTREND-POINTも購入し、ここからIS-305による3次元測量のサービスを開始しました。
- ドローンはその後ですか?
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山下氏
実はドローンは元々会社にあったんです。自己流ですが、私が現場で飛ばして工事進捗写真等を撮っていました。そして、撮り溜めた画像を編集してフォトムービーを作り、これを検査時に流したりしました。目的は、やはり発注者へのイメージアップです。検査で来た方に少しでも好印象を持ってもらえると良いな、と考えたのです。
- i-Construction以前から対応できる体制を整えていた?
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平田氏
結果的にはそうなります。まあ、当社は何であれ新しいことへの取組みが早いんですよ。今回も私たちがスキャナーやドローンを業務で使い始めた後を追うようにして、i-Constructionが始まりました。内容を見てみたらソフトもハードも必要なツールは大方揃っている。あと要るのは知識だというので講習を受けに行ったり、展示会へ行って情報収集しました。そうしてUAV測量のノウハウを身に付けると、すぐに現場で試行を始めました。
- 最初の現場とはどのような現場でしたか?
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山下氏
天川村坪内地区大きな地滑りの現場です。土捨て場の土量を測りたいというので、ドローンで使えないか二人で検討し試してみることにしたのです。私がドローンを飛ばして点群を取り、編集処理はぜんぶ平田さんにお願いして……すると上手く使えるものができました。そこで本格的に運用し、どの現場でも生かせるようにしようという話になったのです。
- 本格的な運用とは?
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平田氏
当社と関連会社の植木組の全現場の点群を取るようにという社長の指示のもと、いまや起工測量をすべて3次元で行うことが当社の基本になっています。i-ConもICT対象も関係なく3次元測量を普段使いし始めたわけですね。もちろん用途は起工測量に限りません。先日も水道工事の現場から「平面図がないからドローンで点群を取り平面図代わりに使いたい」なんて依頼もありました。点群で取っておけば、水道等の管路が変わっても断面が切れるし便利だというわけです。今では他の監督からもどんどん依頼が来るので、各現場の要請に応じ点群活用法をあれこれ試しながら使いまくっています。
- お二人はかなりお忙しいのでは?
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平田氏
そうですね。当社は常時10数現場を動かしていますが、各現場と本社はリモートアクセスで結ばれデータのやりとりもスムーズですし、現場中継カメラでいつでもリアルタイムの状況が見られます。ドローン飛行の前日など、このカメラで現場を確認して準備できるのですよ。しかも、常時持ち歩いているタブレットPC等からもアクセスできるので、非常に便利に使っています。
- i-Con指定現場でなくても前向きに取組むのは?
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山下氏
前述の通り発注者へのアピールが狙いなのです。新しい技術への前向きな取組み姿勢は好印象を与えるでしょう。「印象点」という項目があるわけではありませんが、見た人が好印象を持ってくれれば点数にも良い影響があるのではないでしょうか。実際、ご覧になった方は「すごいね!」と言ってくださるし、良い感じで評価いただいている実感があります。実は、i-Con指定現場はまだ一つもやっていませんが、成果は上がっているんです(笑)。
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平田氏
もちろん作業効率も向上しています。特にTREND-POINTの活用で測量の作業効率は無茶苦茶上がりました。以前は3人掛かりで2~3日かかっていた作業が、今では半日かからずに終えられるのですから、手間も時間も50~60%は削減できているはず。人手が減るのですからコストも抑えられています。
- 機器・ソフトの導入コストが問題という声もありますが?
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平田氏
当社の場合、先行投資でまとめて導入した形ですが、1~2年で十分償却できました。あと、3次元化による「仕事に対する意欲の向上」というメリットも結構大きいと思っています。
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山下氏
そうそう。こういう3次元を駆使する作業って、とにかく面白いんですよね。特に現場に合わせて試行錯誤しながらいろいろ試すのには、ルーティンな仕事とは違う手応えがあります。
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平田氏
私も長く測量の仕事をしていますが、昔は現場を上から見る機会などなかったので、3Dで現場全体を一目で見わたしていると、いまだに驚きと感動があります。見ているだけでいろいろ発想も広がるし、活用アイデアも湧いてきます。そのせいか、当社も毎年のように県の表彰を受けるようになったし……技術系の企業としてランクアップできた実感があります。
現場に応えて拡大する3次元活用法
- 3次元データの活用はかなり広がりましたね
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山下氏
ええ。現場はそれぞれ違うので、個々の必要に応じて活用するうち自然と広がった感じです。まあ、3次元データを作ったからには、活用しなければもったいないですから。現場でもいろいろ好評ですよ。協議書等にも3次元データから作ったビジュアルを載せているので「分かりやすくなった」と言われるし、データをタブレットPCに入れて持っていき、回転させて見やすい角度でお見せすれば「おおーっ!」と声が上がります。現場での打ち合わせでも、工事内容をビジュアルに見せながら行う説明は作業員に好評です。
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平田氏
測量の方も同じですね。ソーラーパネルを計画中の広大な敷地で面積がどれだけあるかとか、高低差はどうかとか、ドローンでパッと測りたいから、とりあえず飛ばしてくれとか……当社の場合、道だけでなく法面もあるし橋梁もあるし、とにかく何でもあるから、ドローンを飛ばすだけでもいろいろな事案があるわけで。新しい現場が来ると、とりあえず「どうやって点群にしようかな?」と考えるようになりました。
- 今後の目標はおありですか?
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山下氏
ツールの利用も含めた3次元データ活用の社内へのさらなる普及が当面の目標ですね。現場での活用はまだまだ一部にとどまっているので、これをどうにかしたい。やはり若い人を中心に進めていくことになるでしょう。
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平田氏
ただ、その場合でも、若い子に新しいツールをポンと渡してやらせるのではなく、まず私たちが試して十分理解してから伝えていくようにしたいですね。多少手間はかかっても、それが本来のやり方だと思っています。
※役職などは2019年春、取材当時のものです。
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