兵庫県発注第一号ICT工事へチャレンジ!
初めてづくしの現場で体感したICTの効果
現場監督がヘリの管制と連絡を取合いながら
ドクターヘリ出動の合間にドローンを発進
兵庫県豊岡市の山口工務店は、60年以上の歴史を持つ地域密着型の建設会社。公共土木主体の建設工事全般に、近年は機械器具設置事業なども展開しています。同社では2017年9月に兵庫県発注初のICT指定工事を受注し、これを機にICTの本格的な導入と活用を開始しました。初めて尽くしとなったその取組みについて、同現場を担当する山口工務店の峻秀雄氏と同社を支援している中西調査・測量事務所の中西康太氏に話を伺います。
兵庫県のICT現場第1号
- まずはこのICT現場をご紹介ください
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峻氏
豊岡市の公立病院の従業員駐車場整備工事です。兵庫県ではいま、県道豊岡インター線の整備工事を進めていますが、この工事のため病院の職員用駐車場のスペースが半分ほど削られることになりました。そこで、減少分を補うため裏手の山を削って拡幅し、駐車場として整備しようということになったのです。この山切り工事にICT活用(発注者指定型)で、県発注工事初のICT工事となったことから、この受注を機に当社もICTの取組みに着手したのです。
- ICT導入の準備はいつごろから?
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峻氏
事前準備等はしておらず、昨年9月に受注してから着手しました。ICT関連の作業を開始できるのは翌年2月以降だったので準備期間は十分でしたが、白紙状態からのスタートだったので、まず機器・ソフト類の選定から始めました。機器としては自動追尾TSや現場端末のTREND-FIELD、それから3Dソフト類ですね。ソフトについては、当社はもともと EX-TREND武蔵ユーザーで、福井コンピュータ製品に馴染みがあり信頼もしていたので、TREND-POINTの導入がすぐに決まりました。
- 3次元の活用はこれが初めてですか
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峻氏
そうです。TREND-POINTを見せてもらった時も「すごい!」のひと言でしたね。それは他も同様で、自動追尾TSにせよ TREND-FIELDにせよ初めて使う機器ばかりで、文字通り初めて尽くしの現場でしたね。もちろんできる限り情報収集しましたが、私だけでなく発注者の方も初めてのことばかりだったようで……皆で手探りしながら進めていった感じです。
- まずは起工測量ですね
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峻氏
ええ、当初、私にはなんとなくドローンは精度が良くないイメージがあって(笑)、3Dレーザースキャナーを使うつもりでいました。ところが実際に現場を見てみると現場となる山は思った以上に凹凸が激しく、レーザーでは取りきれないと分かったのです。そこで、すぐにドローンの利用に方針を切り替え、中西測量の協力を仰ぐことにしました。
- 中西測量では早くからドローンの活用を?
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中西氏
当社がドローンを導入したのは2015年の12月ですから、豊岡市内では早い方だと思います。……というか、現在もまだ、ドローンを実務に使う地元業者は多くないと思いますね。私の場合は、たまたま早い時期にドローンを見る機会があり、すぐ「使えるんじゃないか!?」と飛びついたのです。早く導入して実績を積むことで、新しい仕事に繋げていこうと考えたのです。それと、当社では仕事で従業員が山登りすることも多かったので、ドローンの活用でそうした危険を抑えるという狙いもありました。高齢の従業員をいつまでも山に入らせるのは、やはり心配ですからね。
- ではすでにかなりの利用実績を?
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中西氏
導入当初はお客様もドローンのことをご存知なかったので、いろんな形で活用法を模索しながらアピールしていきました。県下でのICT現場はまだまだ少ないので、当社にとってもここが初めてのドローンの本格的な運用ということになります。
ドクターヘリ出動の合間にドローンを
- 起工測量はスムーズに進みましたか?
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峻氏
実はその前が大変でした。現地の作業面積は約6,000㎡でしたが、樹木が密生した山なので、まずこの樹木を伐採しなければならなかったのです。しかもこの辺りは雪の多い地域なので、降雪前に伐採を終えてしまってドローンを飛ばす必要がありました。具体的には11月中旬から伐採を始めて、12月中旬までにこれを終え、雪が降りだす直前のタイミングでドローンを飛ばしたのです。でも、これもまた大変でしたね(笑)。
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中西氏
ええ。この病院はドクターヘリを所有しており、しかもその稼働率が日本一で、TVで特集されたほどなのです。当然、ヘリの出動を妨げるのは厳禁ですから、出動の合間を縫い、現場監督がヘリの管制と連絡を取合いながら飛ばしました。だからと言う訳ではありませんが、フライトを含めた計測は事前の準備を入れて一日半ほどで完了させました。
- 取得したデータの加工はどちらが?
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峻氏
点群処理は中西さんにやっていただき、以降は3D設計データを固めるところまで私が作りました。TREND-POINTもこの時初めて使いましたが、教えてもらいながら何とかやりきりました。実案件のデータを作りながら理解を深めていったので、ただ勉強としてやるよりも気持ちが入り、効率的に学べた気がします。TREND-POINTも思ったよりも操作しやすく、「これなら地道に取組んでいけば自分にもやれる!」と思いました。
- 初めての3D設計データ作りの感想は?
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峻氏
武蔵で3次元設計するのは初めてでしたが、やり方を知ればこれも簡単でした。まあ、この現場は直線ばかりで、カーブ部分がなかったせいかもしれませんが、とにかく「やれる」という手応えを感じることができました。完成した3Dモデルは、やはりインパクトがありました。画面上でぐるぐる回せるし、設計データと点群データを合体させれば「こうなるのか!」という感じで、計画の仕上がりが目で見て分かる……。これは非常に大きな意味があると感じましたね。
- 大きな意味とは?
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峻氏
今までは測点の断面しか見られず、全体を細部まで把握するのは容易ではありませんでした。しかし、これなら末端部分まで明確に分かるわけで、「ここはもう少し小段を伸ばさないと……」という具合に計画の注意点まで見えてきます。今までのような断面だけでは、そういう予測は難しかったでしょうね。
省力化と効率化に寄与
- 工事は現在どこまで進んでいますか
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峻氏
全体で8段あるうちの4段目にかかったところです。ICT建機による施工は初めてだったので、最初はオペレーターも戸惑いがありましたが、実際に使い始めるとすぐ「ICTの方が全然良い」と言うようになり、今では問題なく進んでいます。従来はまず私たちが丁張をかけ、施工中もその丁張を見る者を1人付けて「もう2センチ中に入れて」などと指示を出していましたが、ICT施工では全てオペレーター1人に任せられます。バケットを当てただけで「ここはOK」と確認できるわけで……非常に便利です。人員も格段に減らせるし、工事の手戻りもなくなりますね。
- 監督さんの負担は軽減されるでしょうか?
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峻氏
丁張をかけないだけですごい負担軽減です。丁張って結構大変なんですよ、山の険しい所を登ったりして……。逆に手間だったのはパソコン作業ですね。これは初めてのソフトだったこともありますが、3次元設計が組み上がっても正しくできているのか、なかなか確信が持てなくて……。まあ、試してみて合ってれば納得できるので、あとは積み重ねでしょう。今回は単純な直線ばかりの現場だったので、次は道路の盛土とかカーブが絡んできたり延長が長かったりするものをやってみたいですね。
※2018年発行のi-Construction活用事例集で掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。
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