全社を挙げてi-Conに取組み11現場でICT活用!
若者の建設業離れを止める現場イメージ革命へ
ICTの幅広い活用で現場のイメージは変わる!
いつかは「女性スタッフだけ」の現場も
福岡県みやま市の河建は、半世紀近い歴史を持つ老舗ながら若手を中心に女性技術者も現場で活躍する先進的な建設会社。公共工事が9割を占めているだけにi-Constructionへの取組みにも積極的で、福井コンピュータ製品を核にすでに11現場でICT技術をフル活用。2018年には国土交通省 九州地方整備局より「i-Construction奨励賞」を受賞しています。積極果敢な同社の取組みについて受賞現場の監理技術者を務めた河野理恵氏に聞きます。
11現場でICT技術を活用
- i-Conへの取組みは早かったようですね
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河野氏
2年前からですが、福岡県では早い方だと思います。社長が技術でも機械でも「新しいもの」が大好きで、どんどん導入してくれるんです。当社の場合、もともと9割以上が公共工事で、うち半分は国交省や農水省など国からの仕事なのでi-Con対応は当然だし、やるからには早い方が良いでしょう。そこで早くから福井コンピュータ製品を導入し、全社で取組んできました。
- 福井コンピュータ製品を選択・導入した経緯は?
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河野氏
実は以前は他社製品を使っていましたが、i-Con対応を機に福井コンピュータ製品を導入しました。何しろソフトメーカーとしてi-Con対応が最も早く広汎で、当時も今もi-Con対応ソフトが全て揃うのは福井コンピュータだけですからね。特に私たちは少しでも早くi-Con対応を進めたかったので自然と……。現在はTREND-POINT、TREND-COREなど点群データ処理と3Dモデル化は全て福井製品で行い、CADは武蔵と他社製品のどちらかを各担当が選んで使っています。また、ドローンは以前から導入して使っていましたし、3Dレーザースキャナーも導入しました。
- 2年でいくつのi-Con現場を?
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河野氏
ICT技術を用いたのは11現場ですね。農政局発注のものなど幾つかはi-Con指定現場ではありませんが、当社が提案して指定現場同様に使いました。要は「ICTを使える所には全部使っていこう」という方針なのです。どの現場もほぼフルにi-Conメニューを使っています。この春、九州地整から「i-Con奨励賞」(※)をいただいた現場もその一つです。
- 受賞現場はどのような現場ですか
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河野氏
正式名称が「矢部川徳島地区築堤外工事」で、私が監理技術者を務めました。具体的には矢部川と飯江川の合流地点付近の築堤外工事で、川幅を広げるため旧堤防を残したまま裏に川を広げ、引いた部分の新堤防を造ろうという3年計画の一部です。当社の担当部分は盛土量1万㎥ほどの箇所で、ややコーナーになった河川土工の築堤盛土工と法面整形工を行いました。i-Con工事としては、まず3Dレーザースキャナーで起工測量してTREND-POINTで点群処理やフィルタリング。さらにEX-TREND武蔵で計算し3D設計データを作ってICT建機によるマシンガイダンスで施工します。そしてTREND-POINTと転圧管理システムで3D出来形管理等を行い、最後にEX-TREND武蔵で電子納品データを作成しました。
- 受賞はどこが評価されたのでしょうか
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河野氏
一番は工程管理だと思います。実はこの現場では、当社担当地区だけが他所より1ヵ月以上遅く発注されましたが、それでいて完了は他所より1カ月早く、全体にスピーディに進められたんです。もう一点は見栄えです。実は丁張が1つもない現場状況をドローンで撮って発注者にお見せし、アピールし続けたんです。それが安全面にも貢献していると感じてもらえたようです。
品質とスピードが最大のメリット
- ご自身はi-Conのメリットを感じていますか
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河野氏
ええ。特にメリットを感じるのは品質とスピードですね。たとえば以前は、一度かけた丁張が他を進めている間にズレてしまい、気づかぬまま進めてしまって……なんていうミスがありましたが、i-Conではこれがありません。だから、いつも安心して次の作業に進めるんです。また、私の場合、男性ほど力が無いので丁張杭も長いものを打つのは大変でしたが、i-Conなら丁張自体必要ないわけで、とても助かるし効率的です。それに重機もMCを使うようになった今は、担当外の現場では私もブルやバックホウに乗っています。i-Con以前は乗りたいとも思いませんでしたが、今は乗りたくて仕方ないんです(笑)。
- 重機オペレータの方は何かおっしゃっていますか
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河野氏
もともとウチは重機屋なので、社内で育てたオペレータが今ちょうど50~60歳です。そこで当社ではまずそのベテランたちにICT建機に乗ってもらいました。嫌がる人もいましたが、コツをつかむと慣れるのは早かったし、すぐ納得して積極的に使うようになりました。ICTならオペレータは丁張等で待たされることがないし、確認等で乗り降りする必要もない。それでいて品質も落ちないし……全然楽なんですね。彼らを見て、私も時間短縮を実感した気がします。
- i-Conの導入や女性の活躍など現場も変わりましたね
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河野氏
大きく変わったと思います。昔は土木の現場といえば3Kどころか、4K〜5Kでしたが、特に最新のi-Con現場は若い人たち……特に女性にもアピールできる状況になってきました。実際、この4月に当社に入社した新人の中に女性新卒者もいます。この人は職場体験で当社の現場を見て入社してくれました。
最新技術を駆使し現場のイメージを変える
- 女性の新人さんはどちらのご出身ですか?
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河野氏
パソコン関係の専門学校出身で、当はコンピュータを使う仕事がしたいと考えて就職活動をしていたそうです。ところがなかなかピンとくる所がなく、たまたま「女性も働ける職場」としてアピールしていた当社に職場体験に来てくれたのです。ちょうどその現場ではMG等を行っており、彼女も現場で点群データや3D設計データを見て「これだ!」と思ったそうです。最初は私も心配だったので「本当に土木の現場だけど、作業衣を着られる?」って聞いたら「着ます!」って(笑)。今は「早く3D測量したい」と言ってます。もちろん男性の中途入社者も、従来とは全然違う分野から来てくれるようになったし、いろんな意味で現場が面白くなってきていると感じますね。
- 御社には他にも女性の技術員が?
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河野氏
現状は私と私の姉ですね。以前は他にもいましたが、なかなか続かなくて。前述の通り、i-Conの導入でそうした環境も変えていけるのではないかと思っています。実際、1人でも女性がいると不思議と現場は明るくなります。男性の持続力と女性の感性が上手く組み合わされば力が発揮され、現場は確実に良くなると思うのです。姉はもう5年も矢部川の現場に入っているんですが、発注者の方も地域住民の方も姉とやりとりしたがりますし、いろいろなことがスムーズに進むようになっています。女性の技術員が育ってきたら、いつか女性だけの現場も作ってみたいですね。
- では、今後の目標は?
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河野氏
会社としては、最新技術にどんどん取組んでいくことが目標ですね。そして、これを核に現場のイメージを変えていき若い人の建設業離れを食い止めて、若手技術者を増やしていくことに繋げたいと思っています。また、個人的にはTREND-COREを使いこなせるようになることが、今の一番の目標です。発注者や現場の人たちとの打合せ用に、これで作った3Dモデル等を使ってみたいと考えているんです。
※2018年発行のi-Construction活用事例集で掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。
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