実現場での多彩なチャレンジを通じて
「ICT技術の全面的活用」をいち早く実践
わが国を代表するビッグゼネコンとして建設業界を牽引し続けてきた大林組は、i-Constructionに関わる取組みにもいち早く着手し、業界をリードし続けています。そんな同社の取組みを主導する情報技術推進課長の杉浦伸哉氏に、業界最先端を行く「ICT技術の全面的活用」について紹介いただきます。
改善でなく「カイゼン」の意識で取組む
- 業界に先駆けてi-Constructionにお取組みですね
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杉浦氏
4月に国土交通省からi-Constructionという概念と基準(案)が発表されましたが、私たちはその翌5月にはi-Constructionの3施策の一つ「ICT技術の全面的活用」で示された、受注者側で実施しないとならない17のプロセスのうち15までのプロセスチェックを終えていました。17のうち2つ残したのは「発注者との協議」に関わるものなど、実際にICT活用工事を受注しないとできませんからね。
- これは実験場で行ったのですか?
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杉浦氏
いえ、3次元測量やICT建機での施工を実験場で行ったら現実と乖離してしまいます。今回に限らず、こうした場合、当社はいつも本当に稼働している現場で行っているんです。今回も竣工前の現場で「本当にここでこれを使ったら、現場はできるかな?」と話を持ち込み、実施させてもらいました。
- いち早い取組みから見えてきたものは?
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杉浦氏
いろいろありますが、最も重要なのは、4月に国土交通省から出された15の新基準の中に現場における生産性向上に対し、一部分でカイゼンが必要と思われるものがあった点ですね。たとえば「空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(案)」で、そこに記された基準に則ってやろうとすると明らかに生産性が落ちるという結果が出たのです。
- 具体的にはどんな検証を?
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杉浦氏
これはドローンによる撮影画像を点群データ化し出来形管理に使う技術ですが、課題になったのはドローンによる空中撮影に関する仕様です。当社では2年近く前から福井コンピュータのTREND-POINTを用いてこれに取り組んでおり、必要な精度のデータを得るための空中撮影の焦点距離や地上解像度、ラップ率、飛行速度等について独自の手法を確立しています。ところが国土交通省の新しい要領(案)で示された基準に基づいて行うと、作業の仕様や同じ面積の計測に必要な作業時間など、相当に厳格かつ膨大な手間がかかってしまうのです。そこで今回、当社の手法と基準(案)の手法で精度にどれだけ差が出るのか、竣工前の現場で検証してみました。
- 結果はどのような?
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杉浦氏
同日同時間帯にいろいろ条件を変えながら飛ばしたところ、国土交通省の基準(案)に合わせると30分で約1,000枚の撮影が必要だったのに対し、当社の手法なら飛行時間は3分、写真も約160枚で完了しました。しかも、3Dレーザスキャナーとの面的比較でも大きな精度差は見られません。この問題については、業界も交えて国土交通省と「カイゼン」を求め打合せしていく予定ですが、当社の手法の方が明らかに効率的だと思っています。他にもこうした問題が隠れている可能性もあるので、引き続き検証も続けています。
- そこまで先進的かつ徹底して試行できるのは御社ならではですね
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杉浦氏
新技術であるドローンの空中撮影の精度検証は別として、ICT技術の活用は地場ゼネコンでも十分できますし、実際多くの地場ゼネコンの方が進んでいます。地場ゼネコンの場合、自分たちでデータを作ってICT建機に入れ、自分たちで動かします。だからICTの良い所も悪い所もすぐ分かるし、ICTが便利だと実感できるんです。これは福井コンピュータの製品作りにも共通していますね。
- 福井コンピュータ製品との共通点とは?
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杉浦氏
実際の施工現場のニーズを取り入れて、製品作りに反映させてくれる点です。たとえば点群処理の使いやすいソフトがほしいと言えば、TREND-POINTができてくる。いわば施工者目線の製品作りが、より良いソフトを産み出しているんだと思います。
- 「これから」の方へメッセージを
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杉浦氏
i-Constructionの取組みは「カイゼン」です。漢字の「改善」でなくカタカナの「カイゼン」。悪いものを直すのでなく、今あるものをより良くしようというトヨタ方式の考え方で、この「カイゼン」は国土交通省の報告書でも使われている文言なのです。つまりi-Constructionは、今までのやり方でもできるが、それをさらに良くしていこうという取組みに他なりません。この意識を強く持ち、とにかく「やれることは、自ら手を動かし今すぐやってみる」ことが最も大切だと思っています。
※2016年発行のCONST-MAGで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。
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