ICT導入後1年余で全現場の8割強でICTを活用
省力化効果20%を実現した地域密着型工事会社
超小規模土工等の本当に小さい仕事でも
ICTを活用できるような体制にしていく
長野県千曲市の市川総業は創業39年の老舗土木工事会社。県や市発注の公共土木工事を主業に、地域密着型の企業として歩んできました。現在は、20代で会社を受け継いだ市川総司社長の指揮のもと、大胆な企業イノベーションに挑戦。2019年にはTREND-POINT、TREND-CORE、UAVにICT建機等を導入して現場ICT化に着手するなど、業界の将来を見据えた果敢な展開で地域をリードしています。その取り組みの背景と狙いについて市川社長に伺います。
土木工事業の魅力向上を目指して
- 公共土木が事業の中心と聞きますが?
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市川氏
ええ。長野県と千曲市の公共事業が業務全体の90%以上を占めています。創業当初は下請中心でしたが、20年ほど前から元請にも力を入れ始め、現在では元請60%、下請40%までになりました。土木工事であればどんな現場にも全般的に対応していますが、長野県という土地がらもあって、特に山奥の山腹工事や砂防工事などを得意としています。
- 若くして会社を継がれたそうですね
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市川氏
当社を引き継いで代表となったのは27歳の時です。地元企業として土台はできていました。ただ、当然ながら当社にも企業として大きな課題がありましたから、任された以上は、私なりに解決を目指して改革に取り組もうと考えました。具体的には社員の高齢化と人材不足です。この問題に対して、私は土木工事業の魅力向上を進めてきました。
- 具体的にはどのような取り組みを?
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市川氏
まさに今回のICT導入とその活用の取り組みがそうですね。実はもともとこれを会社の魅力化に繋げられれば人材不足の解決策につながるのではないか、という思いもあってICTに興味を持っていました。しかし当時、市や県の仕事ではICTはほぼ全く使われず、地元でも「まだ早いよ」という声が大半で、私も挑戦を躊躇っていたのです。ところが昨年6月、ある建機メーカーの方に「ICTに興味があるなら」と、ICTを積極的に活用している山梨県の同業者である平賀建設(有)様を紹介してもらったことが、大きなターニングポイントになりました。
- その同業者にお会いしたのですか
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市川氏
先方の会社まで話を聞きに行きました。そこで実務でのICTの活用方法やその導入効果などいろいろ教えていただいて、現場の生産性を向上させるには導入するしかないな、と。本当にメリットが出せるかどうかは、やってみなければ分からないし、どれだけ生産性をアップすれば成功なのかも分かりません。でも、私は1%でも上がれば良いと思っていました。1%でも生産性を上げられれば、他社より優位に立てるはずだ、と。
- しかし、ある程度導入効果が出ないと
普及が難しくなってしまうのでは? -
市川氏
ええ。導入する以上は利益の幅も広げなければなりません。となると、ICTの一から十まで全て自分たちでこなす必要がある。そうすることで利益の幅も大きくしていけるわけですが……それをやるならソフトウェアや機器類も、一通り全て購入しなければなりませんでした。そこで平賀建設様に「ICTをやるならこのソフトがいいよ!」と教えてもらったのが、TREND-POINTやTREND-COREといった福井コンピュータ製品でした。
- 他社の製品と比較したりは?
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市川氏
特にしませんでした。当社では以前からEX-TREND武蔵を使っていたので、その辺りはスムーズな流れで……。ICTで福井コンピュータが業界をリードしているのは知っていましたし、まあ大丈夫だろうと(笑)。事実、その選択は間違っていませんでしたね。
一気にICTを導入し即座に活用開始
- では導入機器・ソフトをご紹介ください
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市川氏
まず0.7㎥の大型バックホウにトータルステーション、ドローン。全て3D仕様のものです。それからソフトはTREND-POINTにTREND-CORE。あと他社の写真解析ソフトも購入しました。これらは昨年7月の導入ですが、10月に追加でTREND-ONEも入れています。操作修得についてはデモを見た段階でどれも「難しくないな」と(笑)。機器の設置も操作も簡単そうだったので、すぐ現場へ投入するつもりでした。それも特定の現場ではなく全現場でICTを使おう!と考えました。
- ということは社長ご自身が操作を?
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市川氏
そうです。もちろん今は建機のオペレーターやUAVパイロットなど、他に操縦できる者もいますが、ソフト類に関しては今も私が全て操作します。他の従業員に教えるにも、まず私が使えなければ始まりませんから。
- そして、すぐ現場で活用を開始した?
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市川氏
ええ。最初に使ったのは山中の谷止工事現場で、砂防ダムを作ったりしました。それから台風の災害復旧工事で、ICTは特に堆積土撤去で使いました。そういう現場を2つやり、いまは県の道路改良工事。ICT現場として3D起工測量から3D出来形管理まで全て請け負い、ICTを活用しています。……導入して1年余で10現場にICTを使ったわけで、これは年間現場数としては、8~9割に相当します。今では、ちゃんとした工事現場が始まったら、何らかの形でICTを使うのが基本です。
ICT導入により20%の省力化を実現
- 1年経ち導入効果をどう評価しますか
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市川氏
工事完了後に従来工法でやった場合とコストや時間を比較していますが、たとえば土工など、通常1週間かかる工事が5日程度で完了するなど、作業日数も人員も大きく削減できました。私の実感値ですが、以前より20%ほどは省力化できているはずですよ。
- 特にどんな作業で力を発揮しましたか
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市川氏
導入効果は全工程に及びますが、特に盛土工はTS及びGNSSでのMC/MGにより丁張りが不要となり、大きなメリットを産み出しました。その外、山中の掘削作業でも非常に効果的ですね。谷止工など、急斜面で行う工事なので丁張りを出すのが非常に難しく、代人がいつも大変な苦労をしていましたが、これも今は丁張り無しにMCで掘るようになっています。
- FC製品は役立っていますか?
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市川氏
はい。3D測量後、点群化し処理していくわけですが、そうした処理がスピーディなのはもちろん、TREND-POINTで点群を見るとすごく臨場感があり、現場の起伏や広い狭い、植生の有無など現場状況が非常に分かりやすくなります。さらにTREND-COREで設計データや3Dモデルを作りTREND-POINTと連携させれば、設計と現場地盤の取り合いや全体の雰囲気など、図面だけでは伝わり難い所まですごく分かりやすくなりますね。
- 「分かりやすさ」というメリットとは?
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市川氏
モデル等を作って作業員や発注者に見せれば、さまざまな協議や打ち合せが非常にスムーズになります。モデル等で間違いのない仕上りイメージを共有できるので、作業員は「こっちからやろう」とか「後回しで良い」とか作業の段取りを簡単にイメージできる。それは進捗に影響するし、安全管理にも繋がります。また、発注者から設計変更の協議時に「これを移動したい」と言われた時「地山がこうだからできません」とビジュアルに説明できます。以前のように各自のイメージのズレが問題になることもなくなりましたね。
- 導入は成功でしたね
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市川氏
ええ、ICTを実施した工事は生産性が確実に向上します。それはもう実際にやってみて分かりました。後はデータ作成や3D測量等の作業を皆がやれるよう教育を進め、超小規模土工の、本当に小さい仕事でもICTを活用できるような体制にしていきたいですね。
※取材は2020年9月に行われたものです。役職などは取材当時のものです。
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